The New Babylon(第五幕)
(第五幕)
――靄のかかったパリの上空、ノートルダム寺院のキマイラたち。ヴァンドーム広場の柱が打ち倒された(クールベの仕業だ)。
そして、笑顔で洗濯物を振り回す洗濯おばさん。
「どうして仕事が楽しくなったのかって?」
裁縫師たち、靴職人たち。
「わたしたちは自分たち自身のために働いてるのさ。オーナーのために働いているのじゃないわ」
「コミューンによって決められたように」「私たちはもう夜通し働かない」
「コミューンによって決められたように」「私たちの子どもは、もう金持ちの捨て駒ではない!」
「コミューンによって決められたように」「私たちはもう家からの立ち退きを要求されることはない」
「コミューンによって決められたように」――
コミューンでの話し合いをうれしそうに見守るジャーナリストさんは、「時間はたっぷりある。どんな問題も解決できる」
靴職人は「パリにはお金と武器と防衛手段がない」と言う。
困った顔のジャーナリストさん。
靴職人は「店と銀行を押さえられないだろうか?」と提案する。
ジャーナリストさんは、しばらく悩む。
そして決然と「いや、私たちの脅威とならない人を、私たちはだれも脅かしてはならない」。
不満そうなおじいさん(シャルル・ドレクルーズがモデル)と、ちょっとあきれた感じの靴職人。
――二匹のガーゴイル……一匹のアップからの、兵士ジャン。
政府軍の兵士はヴェルサイユにいる。代議士と女優さん、そして、支配人とたくさんのブルジョワたちが兵士をねぎらう。
女優さんがジャンの横へ。「どうして悲しいの?」――ジャンは今にも泣きそうな情けない顔をする。
「だれを残してきたの?」ルイーズの顔が脳裏をよぎる。
カウンターで一人酒を飲んでいた代議士さんは、くるりと振り返り、「兵士たち!泥棒、売春婦、殺人者が、パリを乗っ取った!」と演説を開始する。
ジャンはぼそぼそと女優に告げる。「女の子を残してきたんだ」。女優さんは驚く。「彼女は向こうでは生き残れないわ」。
悪そうな顔の支配人と、ガーゴイル。女優さんと、ガーゴイル。
代議士は続ける。「奴らはあなた方の土地を奪い去り、分割した」
その言葉を聞く兵士、しゃべる支配人、ジャンに訴えかける女優さん。
――一方、コミューン政府では、ジャーナリストさんも訴える。「暴力はいらない。どんなことも平和裏に解決しよう」。
――ヴェルサイユでは代議士さんが訴える。「友よ、フランスの自由の聖歌を歌おう!ラ・マルセイエーズ!」
兵士の格好に扮した女優さんがテーブルに飛び乗り、敬礼する。
そして、女優さんは歌い出す。
さまざまな人たちが映っては消えて、『天国と地獄』のメロディーが流れる。
「パリへ!」。
政府軍の大砲が火を噴いた。
支配人の顔。ブルジョワの断固たる反撃が始まる。
そして砲台。