The New Babylon(第四幕:前半)
(第4幕)3月18日の朝(パリ・コミューンが革命自治政権を樹立した日)
――銃剣にもたれかかって、立ったまま眠る野営の労働者兵。「自警団は彼らの大砲を守っている。」
――「オペレッタの初演の準備をしている」という言葉は、パリのキャバレーでの話なのか、それともここから始まる悲喜劇のことを指すのか。指揮者と女優さんが、ニューバビロンの支配人と代議士が見守る中、オペレッタのリハーサルが進行中。
――野営地に国防政府の軍(国家警備隊)がやって来る。銃剣にもたれかかって寝ていた老兵が目を覚ます。政府軍の銃が火を噴き、老兵は倒れる。
――キャバレーでは、指揮者に合わせて女優が歌う。「みんな愛を探している」。
――老兵の死体。
――支配人と代議士、フレンチカンカンを踊る三人組。
――野営でコミューン側の大砲を撤去しようとする国防政府軍に、兵士ジャンの姿が見える。そして、指揮官がほほえむ。「私たちに必要だったのは馬だけだ。うまく手配できた」。(大砲を運ぶ馬を徴集してるのだろう)
――支配人が手をたたき、フレンチカンカンもスピードアップ。
――政府軍の指揮官は、何かに目を止めて表情を曇らせる。
一人の女性だ。
指揮官は「急げ!」と指示を出す。女性たちの数が増えてゆく。
そして、女性たちは少しずつ近づいて来る。「あんたたちここで何をしてるんだい?」、女裁縫師(ヤニーナ・ジェイモー)も叫ぶ。
大砲の所へ、ぞろぞろと女性たちがやって来る(そこにはルイーズもいる)。大砲の車輪を取り外そうとしている兵士ジャン。ルイーズは厳しい顔で見つめる。
ジャンは「ほっといてくれ。一日中腹をすかせているのは、つらすぎるんだ」ルイーズは、コップになみなみとミルクタンクから牛乳を注いで差し出す。
モンマルトルの丘が、まるでモンゴルの草原みたいになっている。兵士はむさぼるように飲む。
兵士たちに次々に牛乳を差し出す。母親の笑顔だ。
「この男たちを見てみな!なんてかわいいんだい!」。
おばあさんも「わたしももう少しわかけりゃ……」と笑う。男たちも笑っている。
指揮官の姿、支配人の姿、女優の姿、農婦の姿、ルイーズの姿、老兵士の姿、指揮官の姿
――そこへたくさんの馬を連れて兵士たちが戻って来る。
女性たちは何事かとそちらを見る。指揮官は叫ぶ。「やっと来たか!」。
農婦は険しい顔で「これ以上ミルクはないわ」とミルクタンクを放り投げる。女性たちは、みんなミルクタンクを投げる。
ルイーズがこぶしを振り上げ、むちゃくちゃ怒っている。
裁縫師さんも、洗濯屋さんも、「あたしらの大砲を、どこへ持ってこうってのさ!」
――指揮官は「はやく馬にサドルを!」と叫ぶ。
ガヴローシュ青年も大砲に取り付く。
ルイーズはジャンの襟につかみかかる。
女性たちは、みんな大砲の車輪にしがみつく。「撃ちやがれってんだ!」
指揮官は、何やら叫んで命じている。ルイーズともみ合いになっていたジャンは、不意に前方を凝視する。
――コミューンの自警団が戻って来たのだ。
ジャーナリストさんが、高らかに宣言する。「われわれは、黙って武装解除されるつもりはない!」
――指揮官は叫ぶ。「何をしている、はやく暴徒を撃て!」
赤ん坊を抱いた女性、車輪にしがみつく女性。時が止まったようだ。
一人の老兵が進み出て銃剣を投げ捨てる(さっきのミルクが功を奏した!)。「あんたらにはうんざりだ」。
こうして国家警備隊は、コミューンに合流することになる。