The New Babylon(第一幕)
ショスタコーヴィチが楽曲を担当しているモノクロの無声映画。
2018年に記事を途中までアップして、力尽きていたようだ。
しかし、今回は最後までやり通します!
この映画は、どこを切り取っても絵になるところが気に入っています。
無声映画なので、自分なりに物語を補ってみました。
「戦争だ! プロイセンに死を!」--ラ・マルセイエーズを連想させる過激な字幕。
ファンファーレで幕開け。舞台は普仏戦争(1870年)だ。
プロイセンのビスマルクVSフランスのナポレオン3世
ベルリンへの出征兵士が乗り込んでいく汽車と、見送る人々の興奮。
「ベルリンで奴らの血を流すんだ!」「戦争だ、切符は売り切れだ!」
一方、パリのキャバレー(カフェ)では、女神さまの登場するチープなオペレッタが上演されている。ブルジョワたちが酒を飲みながらくつろいでいる。
「戦争だ!物価が上がるぞ!」
傘がくるくると回り、扇が交差するのは、デパート「ニューバビロン」。満員御礼だ。
「くるくる」は、パリのめまぐるしくもはなやかな日常の象徴。扇もまた、行き交う人波の象徴。
キャバレーにいるデパートの支配人(デイヴィッド・ガットマン)は、チャップリンのような小柄なおじさん。
ワインを右手に杖を左手に、そら豆のように座っている。ゆらゆらゆら。
一方、パリの労働者たちは……
工場では女性たちがミシンを廻し、工房(靴職人だとあとでわかる)ではおじいさんたちがトンカチを振るい、
洗濯屋ではおばさんたちがフェルメールの絵のように洗濯をしている。
疲れ果てたおばあさんが、ため息をつく。
一転して、華やかなデパート「ニューバビロン」では、貴婦人たちがバーゲンセールに群がって大にぎわい。
白いレース布が飛び交う中、女店員さん(エレーナ・クズミナ)は「安いよ!」と、笑顔でてんてこまい。
支配人は葉巻をくわえながら、誇張されたコミカルなしぐさで偉そうにしている。
再びルイーズ。商品の服をたたみながら、懐からこっそりパンを取り出して、もぐもぐ食べ出した。おてんば娘。
番頭さん(A.コストリシュキン)がすっと近づく。
肩をたたかれてびっくりしつつ、まだモグモグしている……しばらくモグモグしている。
番頭さんは気取った顔で、封筒を差し出す。
パンがのどにつっかえたような仕草で、「クビなの?」。
上目遣いの巨大人形(ルイーズの運命の象徴)をバックに、今度はパンのせいではなく、緊張でのどをつまらせる。
思い切って封筒を破り、一行、二行、三行……と目を通す。
少しずつ表情が明るくなっていく。とあるお方からの舞踏会へのお誘いのようだ。
きつねにつままれた表情からの破顔一笑。静止した傘が画面いっぱいに広がる。
――出征の汽車、劇場、デパート、それぞれもう一度。
疲れ果てた老婆(労働者)と支配人(資本家)。どちらも動かない。