前もって言っておきますが、夜汽車の男好きです。孤独のグルメ以上の孤グル感です。

私は今日、出張の旅の途中。中途半端な時間での移動になる。向こうについてから何か食べる時間はない。
が、食べないでは長期戦に耐えられない。早めの昼飯を食べるべきだろう。
とはいえ、十時に
昼飯は早すぎる。駅弁を買って、現地に着く頃に食べ終わるよう、ギリギリ遅くに食べるのが最適た。
しかし地元の駅で買う駅弁に目新しさはない。
見慣れた中から何を選ぶべきか。今日の勝ち負けはここできまる……っ!
ここまで反語を繰り返して繋いできた細い線。これがつながる先は、なんと「シウマイ弁当」である。
俵型のご飯に、四つのシウマイ。
そして昆布、紅ショウガ、筍の煮物、卵焼き、唐揚げ、鮭が一切れ、カマボコ、アンズ?
このなにげに盛り沢山なラインナップには私は一度、大敗を喫しているのである。
ここであえて、積年の屈辱に決着をつけてもいいのではないだろうか。
弁当の食べ方には戦略がある。
まず考えるべきは、個々のおかずの持つ攻撃力…「おかず力」だろう。
これは、一口あたりのご飯消費量を数値化したもので、例え味が濃くてもご飯との相性が悪ければおかず力は低い。
お好み焼きが主食なのかおかずなのかで長きに渡る宗教戦争が続いている理由は、このおかず力スカウターの開発と密接に関わっていると私は考えている。
話を戻そう。おかず力。これで考えると、シウマイ弁当は「難しい弁当」と言わざるを得ない。
なにしろ、主力のシウマイのおかず力が低い。戦車に例えると「主砲の貫徹力が低い」ということ。単体でご飯を蹂躙する力はない。だが、それたけがおかずの評価の全ててはない。主砲が弱いなら速度で、運用で、なんなら数でカバーすればいいのだ。そのための、作戦である。
カレーのおかず力は100といわれている。
これはキン肉マンにおいての、ウォーズマンを百万パワーとしたのと同様の比較の為の数字だ。丼物は基本的に95から105のおかず力に推移する。単体で全てのご飯攻略でき、充分な満足感を得て、さらにはおかわりまで狙える主力兵器てあること、誰も疑いは無いことと思う。
そしてシウマイのおかず力を見てみよう。
「5」だ。これだけで飯を食って満足感を得られるか?無理だろう。
ドラゴンボールていうならチャオズ以下。ライフル持ったおっさんの戦闘力だ。
このシウマイをメインに据えて、トータルで勝ちを得なければならない。まさしく通好みの機体といえる。モビルスーツに例えるとジム。
これを勝たせるための戦術・戦略が必要だ。
かつて私が犯した歴史的な大敗。補給もなく塹壕の中で、ただ圧倒的な物量(米の)に押しつぶされた戦い。
その時の戦略はこうだった。
「ロックマン」などに現れる「ボスの連戦」という物に格好良さを感じていた若き頃。黒い三連星のようにシウマイを連続して戦線に投入したら高い満足感が得られるのではという発想から、序盤に全てのシウマイを失ってしまったのだ。
同じ過ちは繰り返さない。
シウマイは合間合間に戦場に投入し、この弁当の主役がシウマイであることを主張し続けなければならない。
そして新幹線は目的の駅に到着30分前になる。狩り(お弁当)の時間だ。
箸を無難に割り、お茶を用意して、ふたをあける。
からあげという攻撃力の高いユニットを温存するのは常套手段。しかし、私はあえてシウマイの存在感を高めるために「先鋒からあげ」でいく。
おかず力の低いカマボコを序盤で消費しておき、そして卵焼きや鮭などの定番で中盤までをもりあげ、昆布と筍の煮物という和の鉄人達によって終盤までを組み立て、合間にシウマイを感じながらもラストを梅干しでしっかりと締め、
一つ残したシウマイでフィナーレを飾る…完璧な運用だ。
順調に一手一手進めて行き、勝ち筋をたどる。長野まであと五分。勝利の方程式が……破れた。
あんず。
なんだこいつは。
普通に果物ならいい。食べ終わった後でみかんを食べても、
バナナを食べようとも、弁当の評価には関わりはない。
しかしこのあんず、弁当箱のなかにいる。
おかずだ。
あきらかに「相性」という点でマイナスのおかず力を持つのに。チューブやサザンオールスターズやレボレボが集まっている番組に広瀬香美が混じるような違和感。
残すのは論外。敗北主義者の意見だ。とはいえ、ご飯のお供にはならない。俵型のにくい奴もあと二つしか残っていない。バランスが崩れる。だが最後まで残しては成らない。弁当箱を閉じるときの余韻が、アンズ味になってしまう。アンズ弁当になってしまう。
残る手駒は筍、紅ショウガ、シウマイ二つとアンズ。ご飯2俵。
時間はあと三分。額に汗がにじむ。
かたずける時間も必要だ。残心せずに武道は終われない。
どうする…私はシウマイの性能を信じて、筍でご飯を進め、ショウガで引き締めてからアンズを攻略する。甘い味が和の雰囲気を破壊する。まずくはない。バイオリンとトランペットやティンパニのオーケストラに混じるゴールデンボンバーの白いヤツ。
甘い口の中にシウマイを投入。間に合ってくれ!
……到着のアナウンスが流れ始める。新幹線は減速しはじめ、駅にはいる。
そして、最後のシウマイ。
少々のからしと醤油を纏った一口サイズの刺客が。弁当の最後を飾る。
蓋を閉じ、手を合わせてビニール袋を閉じる。
立ち上がり、荷物を取り、開いたドアから新幹線をおりる。
私が食べたのは「シウマイ弁当」だった。最後に飲み干したお茶がさっぱりと流したいったのは中華の香り。
最後に噛みしめたのは勝利の味だった。