いきなり現れるアラビア風の旋律。第2楽章のトロンボーンも強烈で、分かりやすい曲想ながらインパクトの強いバルトークの「舞踏組曲」。演奏時間が手頃で終わり方も華やかなので、コンサートのオープニングに聴いてみたい名曲です。

 

この曲において私が重視したいのは、荒々しさや華麗さといった各舞曲の表情をしっかりと描き分けることと、この作曲家特有の静かな部分で透明感のあるサウンドを奏でられることの二点です。

 

この観点から私がよく聴く演奏は、フリッチャイとRIAS交響楽団との録音と、ショルティとシカゴ交響楽団との録音です。

 

フリッチャイ盤は、50年代前半の古い録音ですが、私にとっては理想的な演奏です。グイグイと進んでいく演奏ながら、音には力があり、ファゴットをはじめとする木管楽器の表情付けも実にうまく、ひんやりとした部分の弦楽器の艶やかな部分も素晴らしい。1曲目から満足度の高い演奏を聴かせてくれます。

 

周りをなぎ倒していく圧倒的なパワーで突き進む2曲目は実にカッコよく、雰囲気を変えるクラリネットも素敵です。

目まぐるしく表情が変わる3曲目は、爆発的なエネルギーを表出したかた思うと、ピアノとチェレスタがおとぎ話の世界に誘うかのような夢幻的な旋律を奏で、フルートの優雅な踊りも美しい。次はどんな表情を見せてくれるのか楽しみになってくる、全曲中最も好きな演奏です。

 

夜を思わせる4曲目、おどろおどろしい5曲目の後、力を蓄えていたかのように縦横無尽に駆けめぐる終曲は実に痛快です。特に、ホルンの雄叫びには惚れ惚れとします。クラリネットはどの楽章も大活躍で、最後のひらひらと降りてくる身のこなしも素晴らしいです。もったいぶらず一気に曲を閉じるのも最高で、何度も聴きたくなる名演奏です。

 

一方のショルティ盤は、パワフルかつテクニックの高いオケで、この曲を実に完成度高く聴かせてくれます。個人的には、バランスが気になったロンドン交響楽団との録音よりもこの録音のほうを好みます。

 

どの部分も余裕があってフリッチャイ盤と比べると少し冷静かなという気がしてしまいますが、強靭なサウンドや透明感のある弦楽器はまさにバルトークの音楽そのもの。特に、2曲目のトロンボーンは力の抜けた良い音をしているのにどうしてこんなに強力な音が出るのか、驚いてしまいます。

 

この録音で一番聴き応えのあるのは3曲目で、このオケのレベルの高さをまざまざと見せつけられます。速いテンポで一音一音鮮やかに聴かせる木管楽器、圧倒的なパワーで押し寄せる弦楽器、そして、ここぞというタイミングで効果的に決めてくれる金管楽器や打楽器。このオケで聴く醍醐味がこの1曲に詰まっています。

一方で、4曲目はテンポを落としてじっくりと聴かせてくれ、指揮者の作曲者に対する思い入れが伝わってきます。

 

終曲は少々整いすぎな感じもしますが、金管楽器の爆発力はここでも凄まじく、高性能なオケの演奏を良い録音で楽しむことのできる名盤だと思います。

 

国内盤は入手困難なのが残念です。