ドヴォルザークの序曲「謝肉祭」は、爆発的な喜びを感じさせる冒頭とラストや、中間部の甘い旋律が印象的ですが、一方で寂しさや焦りといったどこか暗さを感じさせる部分もあり、一曲の中で喜怒哀楽が詰まった内容の濃い曲だと個人的には思っています。

 

親しみやすい旋律であり、交響曲の余白に収まる長さでもあるため、録音は相当数ありますが、本腰を入れて取り組んでいないと感じられる演奏も多く、残念ながらなかなか良いと思う演奏に出会えません。

 

私がよく聴く演奏は、ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団との録音と、バーンスタインとニューヨーク・フィルハーモニックとの録音です。

 

セル盤は実に完成度の高い演奏で、個人的には完璧に近いです。スピード感がありながらサウンドに余裕があるため、エネルギッシュでありながらも決してうるさく聴こえず、加えて表現力の豊かな演奏で、歌う部分は弦楽器がふくよかで美しい音色を聴かせ、雰囲気をガラリと変えてくれます。

 

また、テンポが揺れ動く演奏であるものの、落ち着いた部分のすぐ後にくる陽気な部分では、しっかりと戻してくる反応の素晴らしさが印象的で、特に、クラリネットがさっと態勢を整えて高速でおどけてみせる対応力の高さには、舌を巻きます。

 

中間部は清らかな音色でたっぷりと歌い、「モルダウ」の中間部を彷彿させます。一方で、低弦が入ってくる部分からは、この平和的な雰囲気がいつ壊れるかわからないといった不安を覚えるものがあり、まるでショスタコーヴィチの「レニングラード」の第1楽章を連想させます。様々な意味で大変印象的な部分です。

 

後半の細かい音符が続く部分の技術力の高さ、どこか悲哀を感じさせる部分の胸をかきむしられるような痛切な表現、そして、様々な感情を押し流すかのようなラストへの猛烈な突進といった、最後まで充実した演奏を楽しむことができ、この1枚があれば十分この曲の良さがわかるといっても過言ではないと思います。

 

もう1枚のバーンスタイン盤も、セル盤同様スピード感のある演奏ですが、より歌うことに重点を置いた演奏で、しなやかさを感じます。特に中間部の豊かさや広がりはセル盤よりも上で、より素敵な音色のオケで聴きたかったと思ってしまうほど。

 

弦楽器と木管楽器のサウンドが渇き気味なのと、後半の細かい音符が少々苦しそうで、元の陽気な雰囲気を戻すのに少々時間を要しているのが少々気になりますが、彼特有の情熱的な表現や、輝かしい金管楽器をよく活かした華やかなサウンドで、聴きごたえのある演奏となっています。

 

セル盤との比較も楽しいです。

 

 

 

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