ビゼーの交響曲第1番は、弾けるような若々しさと、歌心ある旋律が大変印象的な曲で、後年の「カルメン」等に現れるドロドロとした雰囲気もないので、ストレスなくこの作曲家の魅力に浸ることのできる名曲です。

 

私がよく聴く演奏は、ハイティンクとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との録音と、オルフェウス室内管弦楽団との録音です。

 

ハイティンク盤は、このオケの持つ極上のサウンドや、各楽器の表現力の高さを存分に楽しむことのできる、耳が喜ぶ演奏です。

 

第1楽章はとにかく楽しいの一言。歯切れの良い弦楽器と余裕を持ってたっぷりと歌い上げる木管楽器との対比が素晴らしく、聴いていて自然と顔がほころびます。落ち着いたテンポですが、リズム感が抜群に良いので、瑞々しさは失われていません。

 

夕暮れが訪れ、もの寂しい気分にさせるオーボエと、家で過ごす優雅なひと時を表現したような伸びやかな弦楽器が印象的な第2楽章は、このオケの美しい音色でよりいっそう魅力が増します。一方で、中間部はかっちりとした表現が印象的で、ただ単に雰囲気で流れていくような演奏になるのを防いでいます。

 

第3楽章は、勇ましい旋律の後、グッと雰囲気を変える流麗な弦楽器と柔らかいホルンとの掛け合いがとても印象的。中間部の木管楽器の滑らかさも格別です。

終楽章も、細かい音符がしっかりと消化されたうえで華やかさや優雅さを表出しており、技術的な面を高い水準でクリアしつつ、曲が持つ雰囲気も最大限に表現できる、超一流オケの実力をまざまざと見せつけられる演奏です。曲の初めから終わりまで、この曲とオケの魅力に最大限浸ることのできる、大満足の演奏です。

 

オルフェウス室内管弦楽団盤は、室内オーケストラのすっきりとしたサウンドを活かした透明感のある演奏で、速めのテンポで颯爽と進むのも若々しいこの曲の雰囲気にマッチしています。

 

オーボエをはじめとするソロ楽器の歌心ある表現も申し分なく、また、指揮を置かない演奏ながら、アンサンブルはきちんと整っており、強奏部はバシッと決まるのが聴いていて心地よいです。

 

最も印象的なのが第1楽章で、次から次へと魅力的な旋律が爽やかに通り過ぎ、他の演奏だと旋律の後ろに埋もれがちだった楽器もしっかりと聴こえ、透明感のある演奏になっています。フルートをはじめ、木管楽器の明るい音色も魅力的です。

 

木管楽器の受け渡しがスムーズな第2楽章は、弦楽器の広がりにも不足しておらず、実に美しい演奏となっています。一方で、中間部のかっちりとした部分は、少ない編成だからこそ際立つ透き通った弦の音色が印象的。名残惜しそうに消えていく終わり方もグッとくるものがあります。

 

第3楽章は弦楽器と木管楽器の流麗さが見事。終楽章は、実に鮮やかな弦楽器と比べると木管楽器がこの速いテンポに苦戦しているよう聴こえますが、最後まで爽やかさと歌心に満ちた演奏で、この曲に若々しさを求める方にとくにおすすめしたい名演奏です。

 

録音も非常に良いです。

 

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