まるで天から与えられたような、この世のものとは思えないほど清らかな四音の動機から、人生を駆け抜けるかのように生命力が迸る音楽が展開する終楽章がとりわけ印象的なモーツァルトにとって最後の交響曲、第41番「ジュピター」。

私にとって特別な曲で、心の底から聴きたいと思った時にだけ聴いている曲です。

 

私がこの曲で求めたいのは、どこまでも透き通った美しさと、溢れんばかりの生命力。この観点から私がよく聴く演奏は、フリッチャイとRIAS交響楽団との録音と、ブリュッヘンと18世紀オーケストラとの旧録音です。

 

フリッチャイの演奏は、とにかく前へ前へと進む推進力が特徴的な演奏。それでいて、透き通った弦楽器の音色がこの演奏の価値を数段に高めており、縦横無尽に駆けまわる第1楽章や終楽章は爽快な中にもどこか高貴さがあり、第2楽章は不純物が完全に取り除かれたような純粋な温かさを感じ、第3楽章はまるで澄み渡った空を仰ぎ見るかのようで、心が洗われる気がします。

とりわけ、終楽章出だしの四音の動機が各弦楽器に受け渡されていく部分の美しさは、神聖ささえ感じます。1953年の古いモノラル録音ですが、真っ先に聴きたいと思う演奏。

 

一方のブリュッヘンの演奏は、古楽器オケ特有の透き通った音色や編成を活かし、この曲が持つ澄んだ美しさや生命力を極限まで引き出したかのような演奏。随所で打ち込まれる力強い打楽器(初めて聴いた時の衝撃は、相当大きかったです)と、一音一音しっかりと血の通った表現で、威厳がありながらもスッと流れていくしなやかさを感じます。フルートの音色が心地よいのも嬉しい。

とりわけ、両端楽章で少し曇った後にパッと音楽が明るくなる部分の神々しさは、聴いていてどこか救われるような気がするほど。

 

残念ながら再録音は生命力が大きく減退しており、あまり魅力を感じません。

こちらも再録音より断然好きです。

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モーツァルトの「リンツ」の名盤

https://ameblo.jp/nackpiano/entry-12507177553.html