今日の読売日本交響楽団のコンサートは、カンブルランの常任指揮者としての最後の公演に当たるため、集大成にふさわしい素晴らしい演奏を期待して聴いていました。
一曲目のベルリオーズの「ベアトリクスとベネディクト」序曲は、楽器が少なくなるとサウンドのブレンドがイマイチだったり、音の出だしが合わなかったりといったアラが目立ってしまう演奏でした。
二曲目のベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番は、ソリストのピエール=ロラン・エマールに合わせたかのような明晰な演奏。ただ、ピアノはクリアさだけではなく、まるで指揮者の門出を祝福するかのような温かい感情がこもった演奏でもありました。特に素晴らしかったのは第2楽章で、一音一音かみしめるような出だしから、フルートとファゴットの掛け合いの裏の柔らかい動きといった、聴いていて胸が熱くなるようなソロでした。
それに対して、オケは演奏までどこか乾いていて、ソリストの想いに応えられていないのでは、と感じてしまうほどでした。
後半の「幻想交響曲」は、突っ込んだような出だしからしばらく演奏が安定せずヒヤリとしましたが、次第に良くなっていったと思います。それでも、第1楽章はもっと突き抜けたエネルギーがあっても良かったと思いますし、第2楽章も綺麗だけれどもっと優雅さが欲しい。また、滑らかな弦楽器に対して、管楽器の音色にあまり魅力が感じられなかったのも残念でした。
一方で、第1楽章から不気味な低音の動きに存在感を持たせ、伸びやかな第3楽章まで来ても払拭されずどこか居心地が悪く、終楽章でその不気味な存在がついに主役に躍り出て悪魔的な祝宴となる、そんな狙いが見えてくるような解釈は面白かったです。
良い関係を築き上げたと評価されていたこのコンビでしたが、個人的には、世界の一流オーケストラと肩を並べるには技術面でも表現面でも、そしてサウンド面でも、さらなるレベルアップが必要な気がします。新しい常任指揮者のもと、どのような演奏を聴かせてくれるのか、楽しみに待ちたいと思います。
序曲はミュンシュ盤が好みです
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