こざっぱりした 

ヲジさんは

日比谷線で

周囲の注目を無駄に集めるくらい

顔を新聞すれすれに近づけて

記事に読み入っていた


車両は混んでいるほどじゃないけど

好き放題には座席を選べない


亡くなる間際まで

(もう書いてるだけで悲しく辛い)

歯磨きも、入浴も、トイレも
自分でしたいよう、と母が言うので
担いだり、引っ張ったり、抱き上けたりを
うんうん唸りながらしていたワタシは

左腰骨にヒビが入ってしまい


半身はずっと痺れているし

腰には 湿布をペタペタ貼ったまま

幾ばくか痛みが和らぐ(ような気がする)

右に大きく傾斜した体勢のまま

ヲジさんの横にすわることにする


すくっと真っ直ぐに居られないので

隣のヲジさんに

隣のタイプでもないヲジさんに

傾いで ぴったり寄り添う

そんな感じになってしまう


ツテのツテのまたツテという

薄っすい関係の人が繋いでくれた

凄腕で大繁盛の治療院がある駅まで

あと20分はかかるから


座りながら 暇つぶしに


周りの人達ったら

この寄り添い具合を見ながら

ヲジ・ヲバはカップル!、と思ってるねー

ヲジさんは新聞一筋でツレない様子だけど

ヲバさんは寄りかかって ゾッコンだわ、

ってふうに映ってるんでしょ、

んなわけないやろ!


と、失礼な妄想ゲームをしてみる


隣のヲバさんに

隣の湿布臭いヲバさんに

勝手に妄想されて

ヲジさんもお気の毒に




暫くすると

停止信号を確認したとかで

電車は急停車し

もともと傾いでいるワタシの頭が

揺れで 更にヲジさんの新聞に近づいて

読み入っていた記事が


もみもみ天国、であるとわかる


カラフルなヘソ上セーラー服ガールズ達が

胸前に両手でハートマークを作って

満面の微笑みでポーズする

カラー写真付き お色気スポーツ紙面


傾いだワタシが

記事を凝視してるのに

ようやく気付いたヲジさんは

何だよお前 ほっといてくれ、という

憤懣やるかたない表情で

席を立って行ってしまった


ヲジさん ヲジさん

周りから痴話喧嘩と思われてしまうよう


其方のもみもみとは ちょっと違うけど

これからワタシも

もみもみ天国を訪ねていくの


平日の昼下がり

5両目車端の3人掛け

もみもみに心躍る二人が

偶然に隣合わせるなんて

なかなかないミラクルなのに


立ち去り際に 

もみもみ同志にに向かって

「チッ」と舌打ちするなんて

もうほんとうに どうかと思うわぁ




ダウンこんな清楚なセーラー服姿ではなかった!