オリジナル概念の森田村です。
佳宵とは月の美しい夜のことを指すみたいです。
「ひかる〜!...ねぇひかる見た?」
天ちゃんのよく通る声が遠くから聞こえてくる。きっと今部屋を出ていったまつりちゃんにひいちゃんがどこにいるか聞いてるんだろう。
「ひかる〜」
「どうしたん天ちゃん」
「ねぇ保乃、ひかる知らない?」
ちょうど背丈の大きいテーブルセットに隠れた私の膝元に、天ちゃんがお探しの人はいた。私の膝枕でほんの数分前に横になったと思ったら、もう既に寝息を立ててる。
「すやすやだね」
「すやすややな。起こそか?」
急ぎじゃないからと、伝言だけ預かった。帰り際ニヤッニヤで早歩きしてたから、多分というか間違いなくほかの2期生たちに伝わるんだろう。
「まぁいっか。ね、ひいちゃん」
「...すぅ、すー...」
最近ひいちゃんはよく寝る。
ちょっと前までは夜早く寝ていたくらいだけど、最近はアイドルをしている時以外、気を抜くと直ぐに睡魔がやってくるらしい。睡眠外来にも付き添ったけど、結果は過眠症としか伝えられなかった。
「保乃にはどうしてあげることも出来んのかなぁ...」
「そんなことないですよ」
ひいちゃんの頭を撫でながら、俯く私に誰かが声をかける。顔を上げると、綺良ちゃんと茉里乃ちゃんが入口に立っていた。
「2人は解決方法知っとるん?」
「最近森田さん様子おかしかったんで、幸坂と調べたんですよ。」
「多分ひかるちゃんは、心身が衰弱してるんよ」
「衰弱...?」
衰弱、つまりは弱ってるってことだけど、心身が衰弱してるから睡眠で補ってるってことなのかな...?
「田村さんの考えは半分正解です」
「勝手に人の心読まんといてや綺良ちゃん」
私の心を読んだ?綺良ちゃんによると、人は太陽を含む太陽系の性質をなにかしら持って生まれてくるらしい。おっと、思った以上にオカルトチックだった。
「それで、たまにその性質が強く出る人もおるらしいんよ」
「"太陽寵児"って言うらしいです。ちなみに田村さんもそうですね」
「え、保乃も?」
「ひかるちゃんは月、保乃ちゃんは太陽やね」
まさか私も太陽...ちょうじ?だったとは。それで、その性質がどう関わってくるのか、どうしたらひいちゃんを助けられるのかは気になるところ。
「どうしたらいい、って顔してますね。」
「う、うん。教えて欲しい」
「ふっふっふ、お教えしましょう。ずばり、体温を分け与えればいいのです!」
「体温を...?」
綺良ちゃんの返答に頭がハテナでいっぱいになる。
体温を分け与えるって何?なんで保乃がそれをやればひいちゃんが元気になるん?とか、考え出したら止まらない
「保乃ちゃん、綺良ちゃんだと分かりずらいから私が説明するな」
「なんですか幸坂。私の説明が分かりずらいって言うんですか!?」
「綺良ちゃんは絶対話端折るから任せられんわ」
ぶーぶー言う綺良ちゃんを尻目に、茉里乃ちゃんは話しはじめた。
私たちが普段生活する以上太陽からのエネルギーが必要だけど、太陽寵児は性質が強い分そのエネルギーが数倍必要。そこで、太陽の性質が強い保乃の出番ってことらしい。
「綺良ちゃんが言ってた体温を分け与えるって、保乃が温めてあげればいいってこと?」
「そういうこと。太陽は圧倒的にエネルギー強いから、体で温めるだけでも違うらしいで。」
私の膝枕で安らかに寝ているひいちゃんを見て、最近バタバタしていて、抱きしめてあげられなかったことを思い出す。髪を撫でると、ふにゃふにゃ言いながら笑っていた。
その夜、私の部屋にきたひいちゃんは元気そうにしゃべってはいたけど、やっぱり目はとろんとしていて眠そう。
「ひいちゃん、おいで」
そう言うといつもみたいに胸の中にするりと収まる。
「えへへ、保乃ちゃんあったかい...」
「保乃は太陽やからあったかいで」
「なにそれ〜」
子供みたいにくすくす笑うと、腕の中のひいちゃんは多分無意識に暖かい場所を探して動いたあと、良い位置を見つけたのか私の首筋に頬擦りをした。
「ほのちゃん」
「ん〜?」
「大好きだよ」
「保乃も大好きやで」
眠たげな声で破壊力抜群なことを言ってくる彼女に、言いきれない大好きを伝えるためにきゅーっと抱きしめる。腕の中のひいちゃんは小さい声で笑った後、その声は寝息に変わった。
保乃のお月様
ひいちゃんを想う気持ち全部、体温に混ざって溶け込めばもっとひいちゃんを照らしてあげられるのに
なんてね。