体育館の床を擦る音、その直後ボールを叩く音がする。
今日の体育はバレーボール。私の彼女はバレー部所属だからか、とてもイキイキしている。

「わずかには信じ難いわ。あのThe陽キャな保乃と、こうやって隅で1人体育座りしてるひかるが付き合ってるの」

クラスのお母さん、松田が隣にすとんと座った。この子は私と保乃ちゃんが付き合ってることを唯一知ってる子だ。

「いや、私がいちばん信じられてないよ…」



事の始まりは3ヶ月前のクラス替え直後、よくある好きな人の話がきっかけだった。

「ひかるちゃんってさ、好きな人とか付き合ってる人…おる?」
「え、い、いないよ!付き合ったり、とかも、したことない…」

私はクラス替えで隣になった田村さんは、唐突に聞いてきた。
正直に言おう…私は田村さんが好きだ。優しいし、明るいし、可愛いし、いい匂いするし…
自分じゃ不相応なのはわかってるけど、1年生の時からずっと好きだった。

「た、田村さんは…?」

何故か声が掠れて、震えている。多分、返事が怖かったから。その証拠にうるさいぐらいに心臓が鳴ってる。

「保乃は、おるよ。好きな人。」

さっきまでうるさかった心臓は、急に冷えていくような感覚がした。口ではへぇ〜なんて相槌を打っているが、視界は涙で揺れてるし、足はこの場から立ち去ろうとしている。

「っ…て、待ってひかるちゃん!」
「ふぇ?ど、どうしたの、田村さん」

去ろうとした私の手を握って、田村さんは深呼吸した。

「私が好きな人、ひかるちゃんやで…」

脳内がパニックに陥る。田村さん、の、好きな人が、私?いや、そんなはずは無い!

「ひかるちゃんって、どのひかるちゃんですか?」
「目の前の、私が今手掴んでる森田ひかるちゃんやん、どう考えても…」

いや、何でだ!?掴まれた感覚は現実のものだし夢じゃない。じゃああれだ!罰ゲームで告白するやつ!きっとそれだ。うん。

「も、もしかして罰ゲーム…ですか?」
「ねぇ…それ本気でいってるん?ひとが頑張ってんのに、罰ゲームはさすがに怒るで」

怖い、美人の怒った顔怖い!多分田村さん本気だ!
身体は正直で、腰抜かしそうになっている。

「…で、返事は?」
「……私も、大好きです…グス ずっと、好きですぅ…ウグッ」
「泣かんといて〜!怒ってごめんな、怖かったなぁ」

ぐずっている間、ずっと田村さんにポンポンしてもらって、落ち着いたあと、もう1回お互いに好きを伝えあった。



「で、保乃はひかるのどこが好きだったんだろ?」
「ちっちゃくて、可愛くて、芯が強くて…あとなんだっけ」
「人知れず頑張ってて、意外と心配性なところ」

いつの間にか試合は終わっていて、保乃ちゃんは私の左どなりに腰かけた。

「保乃、聞いてたの?」
「ひぃちゃんの好きなとこのくだりくらいからな」
「ていうか保乃とひかるって、1年の時隣のクラスだったよね?なんで知ってるの?」
「さぁね〜?あ、まりな次試合やで。いってらっしゃい〜」

不敵な笑みを浮かべながら、保乃ちゃんは松田を送り出した。





















保乃がなんで隣のクラスだったのにそんなに知ってるかって?保乃はね、大好きな人のことなんでも知りたいの。だから、いっぱい知って覚えていった。入学式で一目惚れしたあの日から。