今日はこちらを観てきました。
●あらすじ
1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、クラブの改装が終わるまでの間、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)の運転手として働くことになる。シャーリーは人種差別が根強く残る南部への演奏ツアーを計画していて、二人は黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅立つ。出自も性格も違う彼らは衝突を繰り返すが、少しずつ打ち解けていく。
●結果(★5=満点)
★★★★▲(4.9)
(とにかく観て)
●感想
すばらしかったです!
観てよかった!
心から思いました。
1962年が舞台、人種差別がテーマのお話なのですが、全体的にコメディタッチ。。
その雰囲気の中で、あからさまにだったり、さりげなくだったりと、様々な描き方で当時の差別迫害を伝えてきます。
運転手トニーと黒人ピアニストのシャーリーが徐々に打ち解け信頼しあっていく様子は最後まで感動させられました。
南部を旅するロードムービー的な要素もあり、景色を楽しめますし、ツアー先々で行わえるピアノの演奏も聴いていて心地いい。
明るく、軽やかに、しかし真摯に人種差別を描いた、傑作だと思います。
ではネタバレ感想を。
冒頭はトニーが腕っぷしが強くてちょっとズル賢い、でも愛されキャラな所が描かれました。
ズル賢いということは頭の回転がいい、とも言えます。
でも彼には家に来た黒人の作業員が使ったコップをゴミ箱に捨ててしまうような差別意識もあります。
そしてトニーはシャーリーが募集している運転手採用の面接に応募します。
カーネギーホールの2階にある高級アパートに住んでいるシャーリー。
すごい家です。お金持ちなのがわかる。
シャーリーが黒人と知り、しかも人種差別の強い南部への8週間の旅と聞きやる気をなくすトニーでしたが、めでたく?採用w
シャーリーはトニーと話をして、この旅には彼がふさわしいと思ったわけですね。
確かにそうでした。
映画を観ていくうちにわかりました。
トニーは8週間家を離れるので、奥さんに「手紙を書くこと」「クリスマスには帰ってくること」を約束して、旅が始まります。
キャデラックでの旅。
色がティファニーブルーみたいで綺麗でした。
出発の前にトニーに手渡されたのはグリーンブック。
グリーンブックというのは黒人専用のホテルが載っているガイドブックのこと。
黒人専用って言うと聞こえがいいけど、要は・・・・ですよね。
こんな本があること自体がショッキングです。
旅の始まり、二人の性格の違いが随所に現れました。
トニーは煙草スパスパ、ジャンクフード大食い、ガサツで乱暴でおしゃべり。
一方のシャーリーはインテリで物静かでとても繊細。
ピアノは必ずスタインウェイが用意されていることを確認してほしい。
また、毎日ヘネシー(ウィスキー)を一本用意してくれとトニーに頼みます。
ケンタッキー州に着きフライドチキンを食べよう!と言ったトニーにシャーリーは「食べたことがない」と言い、トニーは驚きます。
(当時黒人奴隷の食べるものとして有名なものだった。シャーリーは子供の頃にレニングラード音楽院に入学していて、普通の黒人たちとは違った生活をしていたので食べる機会がなかったらしい)
手が汚れるとイヤがっても無理やり勧められ初めて食べるシャーリー。
おいしい♪と食べ終わったあと「骨はどうするんだ」と聞くと、トニーは「こうするんだ」
ポイっと窓の外に投げ捨てる。
苦笑しつつもマネするシャーリー。
ポイッ。
2人、笑顔。
お、二人の距離がちょっと縮まった?と思ったこの後。
トニーがこの↑ドリンクカップも窓の外に投げ捨てて・・・
えっ?これも許しちゃうの?それってちょっと違わない?って思っていたら・・・
車がスーッとバックして、シャーリーが「拾え」と命令。
トニーしぶしぶ回収!!
そうそう、この二人のキャラならこの展開だよ!
このシーンめちゃくちゃ気に入りました。
一気に内容に惹きこまれた感じがします。
南部の旅には予想どおり差別が待っていました。
上流階級が聴きに来るホールでの演奏はどこも拍手喝さい。
しかしその裏では、ピアノにゴミが散乱していたり
歓迎の食事会にフライドチキン(黒人が食べるものと言う偏見)が出たり
指定されたトイレが屋敷の外の粗末な小屋だったり
控室が倉庫だったり。
オーナーの言動が「当たり前」のようなところに怖さを感じました。
そんな次々と起きる明らかな差別を初めて目の当たりにし、徐々に気持ちが変わっていくトニー。
ある日車を走らせているとパトカーにとめられ、シャーリーに対し暴言をはいた警官をトニーは殴って逮捕されてしまいます。
しかし何もしていないシャーリーもなぜか一緒に逮捕され、このままでは演奏会に行けない。
シャーリーは弁護士に電話。
なんとその相手はロバート・ケネディ。
あわてて釈放する警官たち。。。
ここはシャーリーの人脈のすごさにビックリでした。
こちらが思っている以上に地位や名声のある人だということがわかります。
トニーは自分と比べると学識も地位も財産もあるシャーリーに「自分の方が黒人だ」と言うのですが
彼は「ピアノを弾いている事をとったら自分はただの黒人だ」と激昂しました。
また「演奏を聴きに来る白人も、自分たちは差別をしない立派な人間だと主張したいだけ」と。
シャーリーは自分の立場に苛立っていたのかもしれません。
ある日農道で車を停めた時、畑には多くの黒人たちが労働していました。
シャーリーに気づく彼ら。
同じ黒人なのに、立派な服を着て運転手付き(しかも白人)の車に乗っている。
じっと見つめる黒人たち。
シャーリーが何とも言えない表情で車を出発させるというシーンがありました。
同じ黒人だけど彼らとは違う境遇。
しかし受ける差別は同じ。
結局は黒人。
この差別を無くしたい。
だからあえて厳しい南部でのツアーを始めたのかな、と思いました。
そもそも名門のレニングラード音楽学校出身でクラシックが専門なのに、黒人の弾くクラシックを聴きたい白人がいないという理由でジャズやポップを薦められて弾いていることがもうおかしいです。
シャーリーはツアーの最後の会場であるホテルのレストランで「黒人は入れない」と言われてしまいます。
何を言っても聞き入れない支配人に、2人は演奏をボイコットすることにしました。
それまで何があっても耐え
演奏を第一にしていたシャーリーに変化が!と思ったシーンでした。
そして黒人専用の小さな酒場に来た2人。
白人はトニーだけ、奇異な目で見られ、今までと逆の立場です。
そこでスタインウェイでしか弾かないと言っていたシャーリーが粗末なアップライトピアノで演奏をします。
弾いたのはショパン。
クラシック!
感動~!
その後酒場のバンドメンバーとジャズのセッション。
心から楽しそうな顔のシャーリー。
すばらしい!
トニーも変わったけどシャーリーも変わった!と確信したシーンでした。
こうしてツアーは全て終了。
クリスマス当日、ニューヨークへの帰路につきます。
雪道の中、再びパトカーに止められる車。
警官が車の中を覗き込みます。
また人種差別されるのか?と思ったら警官はタイヤがパンクしていると教えてくれて、その上雪の中安全にタイヤ交換が終わるまで他の車を誘導してくれたのです。
ホッとしました。
しかし激しい雪は降り続き、トニーは運転に四苦八苦し疲れ果て休みたいと言います。
クリスマスには帰ると約束しているのですが「間に合わなくていい」と。
その次のシーン、車が家に着くのですが・・・
運転していたのはなんと!
シャーリーでした!!
後部座席にはぐっすり眠るトニーの姿が。
クリスマスに間に合わせるために、運転変わってあげたんだーー!!
ここ、めっちゃ感動しました。
信頼、いや友情を感じました。
トニーは家に寄ってくれ、と言いますがシャーリーは断り、カーネギーホール2階の高級アパートに帰りました。
広い部屋に一人ポツンと座るシャーリー。
一方トニーは家ではクリスマスパーティが始まっていて、妻や親戚たちが出迎えます。
「ニガーはどうだった?」と聞く親戚に「そんな言い方やめろ」というトニーに微笑む妻。
この妻とっても素敵な人でした。
旅の途中、シャーリーはトニーが妻へ手紙を書いていた時、誤字の指摘だけではなくて、文章の方も「言うとおり書け」と言って愛に満ちた詩人のような言葉を書かせていました。
手紙が届くたびに大喜びする妻。
文章がそれまでのものと急に変わって「浮気でもしてる?」と疑うのが普通ですがどうもそんな様子はなくて。
純粋な女性なのねー、と思って観ていました。
ところが最後のそのクリスマスの日、一度は家に帰ったシャーリーがトニーの家にシャンパンを持ってやってきました。
「ご主人を返しに来たよ」
と妻に言うシャーリー。
彼を大歓迎しハグした妻が・・・
小さな声で「手紙をありがとう」って言ったんです!
全部バレてたーー!!!
この人ステキすぎるーー!!
そして!
ここで映画は終わりでした!
ああ、なんて素敵なラストシーン!
何も文句がない。
こんな気持ちのいい終わり方ってなかなか味わえないです。
はー、すばらしかった・・・・
言いたいこと、描きたいことはまだまだあるのですがキリがないのでやめておきます。
会話、景色、ピアノの音色・・・
もう全てに無駄がないというか、全てがちょうどいいというか・・・
全てが心地いい映画。
そして1960年当時のアメリカを知ることができる映画。
多くの人に観てほしい。
ぜひぜひ!!
自然に心に沸き起こる、笑いと優しさと感動を味わってもらいたいです。