nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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産まれてから今まで会ったことがなかったジョンヒョンさんの子供。
ジフくん。
天気が良く、緑の芝生が広がる休日の公園。
キャッチボールをしている一組の親子に近づくとわたしに気が付いて、ボールを投げる手を止めて親子が並んだ。
一人は昔から知っている人。
もう一人は知っているのに、知らない子。
「悪いな。こんなところまで」
「いいえ。わたしがお願いしたから良いんです。……こんにちは。コ・ハジンです。お父さんに仕事でお世話になっています」
「こんにちは。ジフです」
「挨拶ができて良い子ね。それに、ジフくんの瞳。とても綺麗」
はにかんでいるジフくんは、高麗での陛下とは違い顔に傷もなく、愛情を受けて育った笑顔。そんな陛下の笑顔を見て視界がぼやけた。
一方ジフくんは挨拶が終わるとわたしに興味を失ったようで、グローブをジョンヒョンさんに渡し、遊具の方へと走り出した。
「会わせてくれて、ありがとございます」
「……すまない」
地面を見て謝るジョンヒョンさんと、涙でぼやける視界でも陛下を追うわたし。
「ジフ―!」
遠くから陛下を呼ぶ声がして、手を振りながら歩いて来る女性。近づいた女性を見れば、それは高麗で会ったことがあるヨ皇子様の妃だったパク妃。
『負い目がある』と言ったヨ皇子様の言葉にも納得がいき、わたしは女性をみつめた。隣に来たパク妃にペコリと頭を下げて、簡単な自己紹介をお互いがすると、ジョンヒョンさんは陛下の後を追い遊具へと向かった。初めて会った女同士でしばらく天気や仕事の世間話をして。ポツリと言われた。
「私、夫はあなたを好きだと思っていたの。だから私と結婚すると言われて驚いたんです」
「……わたしたちの関係は、ピッタリ当てはまる良い言葉が分からないけど。兄妹……が近いかも。わたし、ずっと昔。ジョンヒョンさんの弟と付き合ってたんです。彼をすごく愛してるけど誤解してすれ違って、気持ちを持ったまま離れて。彼は亡くなった。ジョンヒョンさんも彼とケンカ別れしてしまっていて。だから弟の記憶があるわたしを切り離せなかったんだと思います」
「そう……。あの人、自分のことあまり話さないから。今までずっと疑っていたけど、今日初めてあなたに会ってその言葉が信じられた。うん、お互いが恋愛の情ではないって何となく分かったし。あなたはまだ弟さんのことを愛してるみたいだから。会えて良かったわ」
優しい表情でわたしに笑ってくれ、陛下の元に向かって歩いて行った。陛下の名前を愛おしそうに呼び、親の愛情をたくさん受けている陛下に少しの淋しさと、安堵と、喜びが起きた。
「ヘ・ス……」
入れ替わりで戻って来たジョンヒョンさんがわたしの高麗での名前を呼ぶ。
懐かしいもう一つのわたしの名前。
「いいの。あなたがちゃんと愛してくれたら。両親の愛情を伝えてくれたら、それでいいの。きっと来世でもわたしたちは会えるわ。だって、高麗でも現代でも会えたもの。次は同じ時間を一緒に歩ける二人として出会えるはず。陛下を愛してくれて、ありがとうございます。ヨ皇子様」
声を上げて笑っているジフくんである陛下。
一緒に並んで歩くことはできないけど、遠くからでも見守ることはできる。
たまに淋しくなって、なぜ同世代で生まれ変わらなかったのかと陛下に文句を言いたくなることもあるだろう。だけど……。
「次は、一緒に生きましょう」
そよ風に消されるほどの小さな声で願った。
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ハジンが現代で一人で生きていく選択をしたお話でした。
来週は別ver.の終わりをUPします。
ここまで読んでいただきありがとうございました!