nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「俺たち、結婚するか?」

 

真剣な瞳は冗談を言っているわけではないと分かる。けれどわたしたちの関係は恋人同士なんてものでもなく、手すら握ったこともなかった。

 

「何で?」

 

「ソが、いないだろう?この時代では現れないかもしれない。……なら、歳をとった俺たちにできるのは、思い出し、話して、あいつらを忘れないことだ」

 

「やっぱり、高麗の記憶があったんですね」

 

わたしもコーヒーカップに手を伸ばし、まだ温かいと言える温度のコーヒーを飲む。

 

「やっぱり?」

 

落ち着いているわたしが意外だったのか、少し驚いた表情で聞き直すジョンヒョンさん。珍しい表情にクスリと笑いが起きる。

 

「初めて会った時に迷いもせずにわたしに声をかけたでしょ?他にも何組か待ち合わせしていたのに。それに、編集長にしては高麗時代の背景を良く知っていたもの。そうかな?って。ずっと思ってた」

 

「そうか……」

 

フッと小さく二人で笑い、残りのコーヒーを無言で飲んだ。

 

 

 

 

 

その後のわたしとジョンヒョンさんの関係は、周囲から見たら‟事実婚の夫婦”という名前になるかもしれないけれど、実際は茶飲み友達。ルームメイトのようなものだった。休日の昼間にリビングの温かな光の中で高麗の話をする。それも幸せだった後継者争いが始まるまでの僅かな間の話が多かった。

『ウンが……。ジョンが……』と話したり、わたしの本を持ち出して『この時……』と話したり。

そんな関係もあっという間に過ぎ、ジョンヒョンさんが先に逝き、一人残った小さな家で暮らした。

それも、もう終わり。

 

 

 

目を閉じるとあなたが浮かぶ。

 

『行こう……』

 

夜の星々に溶け込むように青いペジャを着たあなたがわたしに手を差しだす。

わたしはその手に自分の手を伸ばし、そっと重ねた。一歩あなたに近づくと、わたしの腰を引き寄せるから。

 

『陛下。来世では。一緒の空間、一緒の時間でめいっぱい。心ゆくまで愛し合いましょう?』

 

背伸びをしてあなたの唇にキスをした。優しい瞳で見つめ返すあなた。

頬に添えられた手、近づく顔、重なった唇が離れる。

 

『私のスよ』

 

そして光がわたしたちを包み、一つになった。

 

 

 

 

 

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