nabisonyoです。
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こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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2020年6月
お父さんとお母さん。二人と本当の親子なんだと思うようになり、心の引っ掛かりが半分取れた日々を過ごして、今日もお父さんの会社にお使いでお弁当を届けに来た。
エレベーターの扉が開くと正面に立っていたベクさん。
「お、ソルファじゃん!ソ兄上にまた弁当持ってきたの?」
ベクさんの言葉に頷き、『そうです。お父さん、いますか?』と聞きながらエレベーターを降りた。すると別の所からも声が飛んできた。
「ソルファ!また変なヤツに声を掛けられなかったか?」
その声を聞いてドキンッと胸が鳴り、顔を向けるとジスさんがいた。でも、その隣には綺麗な女性がいて。私のトレーナーとデニムとスニーカーという格好とは違い、綺麗に化粧をして女性らしいスーツを着てハイヒールを履く。その人が私を見て笑ったから……目を逸らして『大丈夫です』とだけ返事をし、近づいてくる二種類の足音に下を向いた。
「ソ~ルファッ。何かあった?暗いじゃん。オッパが話を聞いてあげようか?」
私の顔を覗いてまで見てくるベクさんに驚いた。だけどクスッと笑うことができた。
「んっと、大丈夫です。やっていない課題、思い出しただけで」
「そっかぁ。でも、課題やる前にオッパとケーキ食べに行こう!」
肩を組まれて引っ張られるようにエレベーターへ向きを変えるベクさん。ジスさんに『ウン兄上!』と呼び止められるけど、ベクさんは気にする様子もなく『休憩~』と手を振っていた。二人きりのエレベーター。鏡のような扉にベクさんがニコニコと笑っている姿が写っている。赤と黒が混じった髪色。その姿を見て‟自由人”という言葉がピッタリ当てはまるよう……。
「で?ジョンがどうかしたの?」
と思っていたのにずばりと言われ、驚いて目を見開いてベクさんの顔を見る。
「俺が可愛いのは分かってるって。あんま見つめないで♪」
変わらずニコニコしていた。
会社の近くのカフェに来て、二人で横並びに座りケーキを食べる。ベクさんはアイスコーヒーとチョコケーキ。私はアイスティーとイチゴタルト。
ボソボソと私の胸のモヤモヤする気持ちを話すとベクさんはアッサリと言った。
「あ~ん。ジョンが好きなのね?」
「え!?一言もそんなこと言ってないです!」
「またまたぁ。だってジョンが会社の女子と話してるの見てモヤモヤしたんでしょ?近くにいるとドキドキする。んなもん好きってことじゃん」
ニヤニヤして私の顔を見たベクさん。でも悩むような表情に変わり、アイスコーヒーに指しているストローの先を噛みながら呟いた。
「ん~、ジョンねぇ。ジョンかぁ。う~ん、ジョン……」
悩むのはしょうがないと思う。ホントのホントの話なら、ジスさんと私は育ての親と子供という関係だから。話を聞かされたベクさんも困っているのかも、そう思っていたのに。
「なんで俺じゃないんだろ?あ、スンドクがいるからか。振られるって分かってるもんね。そっか、だからジョンか。しゃーないね、それは。ジョンは彼女いないし、筋肉バカだしね。ハハッ。でも、そうだな。恋愛相談ならヨ兄上がいいんじゃない?」
何だか変なことを言っているような、ジスさんをバカにしているような。首をひねりたくなったけど、からりと笑ってアドバイスをくれた。
「ジョンヒョンおじさん?」
「ぶはっ!いいね、それ。はははっ」
どこにツボがあったのか分からないけど、しばらく笑い続けたベクさんは目尻の涙を拭く。
「そうそう、ヨ兄上。あの人、ああ見えて面倒見が良くて、恋愛成就させるの得意なんじゃない?俺もペガも、ヨ兄上のおかげで今の彼女と付き合ってるし。ソ兄上だってハジンとケンカした時に相談してるし」
「えぇ!?」
意外な人物の名前が上がってビックリしたけど、ベクさんはいたって本気のようで。
「あ、でもソルファ。俺のことはベクオッパって絶対に呼ぶんだぞ。こんなカッコ可愛い男にベクおじさんはダメだからな!」
必ず‟オッパ”呼びをするように言い、私のお皿から一番大きなイチゴを盗っていった。