nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2019年12月

 

スヌンも終わり新正が近づいてきている休日。午前中はオンドルが効いた温かい自室で過ごしていたけど、昼食を食べた後はリビングで熱いお茶を飲んでいた時。

 

「ねぇ、ハジンお母さん。二、三日前から何だかジフお父さん、私に対して変じゃないですか?気のせいかなぁ?」

 

昼食後にジフお父さんがキッチンに立ち、使った食器や調理器具を食器洗浄機に入れている姿を眺めながら、テレビを見ていたハジンお母さんに聞いた。

ここ数日、ジフお父さんが異様に私の行動を聞いてくるから。今までもそれなりに聞かれはしたけど、最近特にヒドイ。予備校が何時に終わるか、誰と会うのか。そして必ずそこに男はいるのか、と。

自分ではそんなに根掘り葉掘り聞かれるような、信用がなくなる変なことをした覚えもなく、ハジンお母さんに聞いてみた。

 

「あぁ、あとで分かるわよ。今日はジュヒョクが家に来ると言ったでしょ?その時にね」

 

苦笑いで返され、ハジンお母さんはまたテレビに視線を戻した。するとCMにお気に入りのアイドルグループが出てきてニコニコして。CMの音を聞いたジフお父さんは『おい、ハジン!浮気するな!』と急いで手を拭きながらリビングに向かって走り出そうとしていたけどインターホンが鳴り、すごくイヤそうな顔をして玄関へ向きを変えた。

リビングに戻って来たジフお父さんの後ろにはジュヒョクさんがいて、爽やかな笑顔で挨拶をしてくれた。

 

「やあ、ハジン。ソルファ。休みの日にすまないな。今日はソルファにお願いがあって来たんだ」

 

「え?私、ですか?」

 

リビングのラグに座ったジュヒョクさん。その隣には不貞腐れて背中を向けそうな感じで座っているジフお父さん。ジュヒョクさんはジフお父さんに疲れたような視線を向けてから、持ってきたバッグからA3サイズくらいの張りのある丸めた紙を取り出した。

広げたそれは一枚の写真で。夕暮れの風景。

藍色の空に小さな月が浮かび、オレンジ色の光を残して太陽が沈んでいるところだった。

 

「う……わぁ!綺麗!これ、この間の写真ですか?こんなに素敵な写真が撮れたんだぁ。……で、私にお願いですか?」

 

感嘆の声を上げて、しばらくその写真を眺めていたけれど、ジュヒョクさんが私にお願いがあると言っていたことを思い出し質問した。

 

「この写真をコンクールに出したくて。で、ここ。ここにソルファがいるんだ」

 

素敵な写真のなかで指した箇所には確かに小さく誰かが座っている姿が写っていて、でも私かどうかも分からないくらいの後ろ姿だった。

 

「これくらいなら私に許可なんて、いらないですよ」

 

『それがな……』とジュヒョクさんは言いつつ、バッグからさらに紙を取り出した。

取り出した写真の一枚。そこには沈んでいく太陽のオレンジ色の光を浴びて、膝を抱えて座っている私の横顔。

その横顔は写真を見て心の奥から詰まるくらい、私の内側が現れていた。

……‟寂しい”っていう感情が。

 

思わず俯いて写真から視線をそらしたけど、『……で、もう一枚』とジュヒョクさんが言ってもう一枚紙を出した。

 

「この写真たちをもう少し大きいサイズで三連のパネルにしたいんだ。これがその最後」

 

その言葉に顔を上げると、今度は写真の中で微笑んでいる私がいた。

こんな顔をして笑っている自分が信じられなくて、何があったかとあの時のことについて考えを巡らすと思い当たることが一つだけあった。

 

 

でも……何で?

 

 

「これ、私ですか?」

 

思わず聞いたのは自分がこんな表情をする理由が分からなかったから。

こんな表情をしている友達を何人か見てきたことはあったけど、自分には無いことだった。

 

「あぁ、間違いなくソルファだ。……だからソ兄上もご機嫌斜めだろ?」

 

その言葉の意味が分からず、ジフお父さんへ顔を向けると苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

 

「ソルファはそのままでいいんだぞ?父さんがどこへだって連れて行くし、ずっと守るからな!」

 

「え?は、はい」

 

スゴイ勢いで言うジフお父さんにたじろぎながらも何とか返事をすると、少しだけ落ち着いたようで『出かける時も送り迎えをするからな!』と念を押された。

隣にいるハジンお母さんと正面に座るジュヒョクさんはやっぱり呆れた顔をしている。

でも私はジフお父さんの表情から親の愛情を感じて何だかくすぐったくて、温かい気持ちになり笑いが込み上げた。

 

「フフッ。はい。ジフお父さんにお願いします」

 

 

 

結局、ジュヒョクさんは『黄昏月の気持ち』と名付けた三枚の写真をコンクールに出したと聞いた。そしてジフお父さんの当たりが強いと、しばらくジュヒョクさんがぼやいていた。

 

 

 

 

 

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