nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
※こちらは『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』も関係する二次小説になります。
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システムの納期が近くなりベクさんは頭のネジが一本取れたのか、ハイテンションで作業をしている。そんな中、順番にと言われ今日は早めに帰らせてもらったけど、それでも10時を回っていた。
休憩室のベンチに座りたいと思う体を、ベッドで寝ようと誘うように家に向かって歩き出す。
街灯と街灯の間の暗くなる場所から小さな声が聞こえた気がして立ち止まり、声のした方へと顔を向けて目を凝らすと、繁みの間からチラッと小さな影が見えて近づいた。
「ナビ……。ナビや。出ておいで」
繁みの前でしゃがみ、小さな声で呼ぶと箱の中から小さな声で鳴く子猫がいた。
「お前も……一人?」
そう呟いたらもう箱を持ち立ち上がって。私にクリッとした目を向け、何度も鳴く子猫と一緒に夜の道を歩き出した。
玄関ドアを開けて間接照明だけが付けられていたリビングへ静かに入り、もう一人の住人に気付かれないように私の部屋に入ろうとした時、バスルームのドアを開け濡れた髪のジョンヒョンが顔を出して声をかけてきた。
「今日は帰れたのか?」
低い声に思わずビクリと肩を震わせて立ち止まる。顔だけ振り向き、子猫の声が紛れるように大きな声でぎこちなく返事をした。
「うん、順番で。ベクさんはまだ仕事してる。私もジョンヒョンが終わったらシャワー浴びて寝る」
すぐに部屋のクローゼットに箱を置き、子猫をひと撫でして着替えを持ってバスルームへ向かった。ドアを開けると上半身裸でシルクのパジャマのズボンを履いて、歯を磨いているジョンヒョン。鏡越しに私を見て、歯磨き粉を口から出した。
「飯は喰ったか?」
「仕事中に少し食べた」
「そうか」
そう言って口をすすぐとバスルームから出て行った。気付かれなかったとホッとしながらシャワーを浴び、寝る準備をしてリビングから自分の部屋のドアに手を伸ばすとジョンヒョンの部屋のドアが開き声をかけられた。
「何してる。明日も何時になるか分からないんだろ?早く寝るぞ」
「う、うん……」
仕事をしていたのかブルーライトカットの眼鏡を掛けたジョンヒョンが私の手を引き、ジンヒョンの部屋へ連れて行く。机の上にはノートパソコンの画面が開いたまま。それをパタンと閉じてから眼鏡をはずしてその上に乗せる。ベッドの端に座ったジョンヒョンが脚の間に私を引き寄せ抱きしめた。
お腹にはジョンヒョンの固い髪。普段は上げている前髪が下りている。その姿を見ることができる人は私だけ。それが嬉しくて、愛おしくて髪を梳くように撫でた。
何回か撫でていると、膝の上に座らされ目の前にはいつもの強気な目とは違う淋し気な目が薄く閉じ、私の唇に優しく触れた。頬、瞼、耳、首。ゆっくりと触れ、離す。
横に二人で倒れるけど、ジョンヒョンは静かに抱きしめたまま動かない。
ジョンヒョンの胸に頭を寄せるとドクンドクンとしっかりと鼓動が聞こえる。
「ジョンヒョン」
「何だ?」
「……ずっとこうしたかった」
心地良い温かさが疲れた体に沁みて瞼を上げることがすぐにできなくなった。
目覚めるとまだ夜中で、隣にジョンヒョンはいない。シーツの温もりはまだ残っているから水でも飲みにキッチンへ行ったのかと思い、私もベッドを抜け出した。足の裏がひんやりと床の冷たさを感じ気持ちが良い。だけどドアを開けてキッチンを見てもジョンヒョンはいない。リビングを見回すと私の部屋のドアが少し、開いていて。
音を立てないように覗くと床に座り込むジョンヒョンがいた。
その手には私が連れて来た子猫がいる。
「……」
声をかけようとすると、ジョンヒョンが言った。
「お前も、愛してくれる親がいないのか?」
その言葉にキュウッと胸が苦しくなる。
「ナビ……ジアンは、お前と一緒だ。弱いけど、強い。ジアンがお前を愛してくれる。お前には帰る場所ができた。良かったな」
……。
私はそっとジョンヒョンの部屋に戻った。そして隣に戻って来たジョンヒョンに寝たふりをして抱き付く。
あなたの‟帰る場所は私”だと分かってもらうために。
そしてあなたに愛を伝えるために。
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チョットだけ…。
ジアンとヨ皇子様が子猫を『ナビ』と呼んでいます。意味は‟蝶”です。
これは猫の名前ではなく、韓国では野良猫のことを『ナビ』というためです。
フラフラどっか行っちゃうところが蝶と似ているため、らしいです。
ユ・アインさんの映画『バーニング』でも野良猫に対して呼んでいました
ここまで読んでいただきありがとうございました!