nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
※こちらは『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』も関係する二次小説になります。
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2021年12月
会社の自室のデスクに向かって仕事をしているとソが勝手に入って来て、俺のデスクに置いてあったリモコンのボタンを押しガラスパーテーションは瞬時に色を変えた。そしてソはリモコンをソファに向かって投げつけ、怒りの表情を向けていた。
「ヨ兄上。……ジアンをどうするんだ。捨てるのか?」
この一週間、ジアンの姿が見えないことには気付いていた。だが、それをあえて無視して仕事に集中していたのに。
苛立ちを前面に出して返事をした。
「何だ。仕事中だぞ」
お互いが睨み合い、沈黙がしばらく続いた。だが先にソが怒りを抑えるように大きな息を吐き、口を開いた。
「……ヘ・スは」
ヘ・ス?
いきなりなんの話だ。
「ヘ・スは長年のストレスで心臓が弱って亡くなった。俺が誤解をしたまま手放しジョンの元に嫁いだが、最後は何度も俺に会いたいと書状を送ってくれていた。だが俺はジョンからの手紙だと思い込み、読みもしなかった。そしてヘ・スの訃報を聞かされた」
「……」
ソの表情が苦痛に歪んでいて、どれだけヘ・スの死がソにとってきつかったかを思わせる。
「手を放して後悔した。常に、だ。ヘ・スとまた会うんだと強く願ったが、また会えるまで千年もかかった!それすら奇跡だ!当たり前のように二度と会えなくても仕方がないことなんだぞ?」
「何が言いたい」
「ウクの診察では、ジアンはストレスから心臓に負担が来ているらしい。……ヘ・スと同じだ。ジアンはずっと幼い頃から苦労してきた。その分ストレスも多かったはず。溢れそうなストレスのダムの堰が切れたのはヨ兄上と離れたからだ。……ジアンは今。食べない。泣きもしない。ただ弱っていく。ヨ兄上、ジアンが生きているのは当たり前じゃない。いつ何があっても、いつ死んでもおかしくないんだ」
「兄上。兄上が高麗で苦しんでいたことも、現代では俺たちのために自分を犠牲にしてずっと仕事に取り組んでいることも分かっている。俺たちは誰も兄上を恨んでいないし、ジアンが兄上のせいで血に染まることも、暗闇に落ちることもないんだ」
ソが真っ直ぐに俺を見て伝えてくる言葉を受け、その視線に苦しくなり顔を背けた。
俺たちは一緒だと思っていた。
ソが一番俺を恨んでいると思っていた。
だが、まさかソからそんな言葉が出てくるとは。
過去に犯した罪のために兄弟を一番に考えなければいけないと。
自分が欲しくても、兄弟の幸せを優先すると決めていたのに。
「兄上!」
「……ジアンは」
「俺の家にいる」
短く答えたその声と共に腰を上げ部屋を出て、地下駐車場に停めてある車にソを乗せた。地下から地上へと向かう先には当然のように光が溢れている。街には人が歩き、車が走る。そんな昼間の喧噪とは真逆の静かな車内で、ソが窓の外を眺めながらボソッと呟いた。
「神が許さなくても俺たちが許す。それ以上に、ジアンがヨ兄上を望んでる」
「……ふ……ん」
ソの家につくとベッドに弱々しく寝ているジアンがいた。深い眠りについているジアンの掛け布団ごと体を抱き上げ、ソが止める声も聞かずジアンを抱えて外へと向かう。
「ウクに俺の家へ来るように言え」
車の助手席にジアンを乗せ、座席を倒してやると寄っていた眉が離れた。ジアンのシートベルトを締めている最中にふと手元を見ると、どこにそんな力が残っているのか強く握っていた手には俺がやった時計が握られていて。
その姿に今まで以上に愛おしさが込み上げた。
これまでの疲れが一気に出たのだろう。しばらく寝込んでいたジアンも新正をはさみ二週間が経とうとするころには元のように動き、すぐにでも仕事に戻りそうだった。クローゼットの中で俺に背を向け、しゃがんでバッグの中身を確認している最中に腕時計を入れようとしたのを見つけ、ジアンの手首を持ち上げ無理矢理立たせた。
「ちょっと!」
「この時計、出て行った時に持って行ったのか?」
「売ってやろうと思って、持って出ただけ」
「フッ。売れば良かったのに。次はジアンに似合うものを買ってやるよ」
「いらない。……これが、気に入ってるから」
憮然として言う姿が気に入り、俺は噛みつくようにキスをした。
ずっと許しを求めたかった。
だが、求めてはいけないと。
与えられないと思っていた……。
あの日から動き出した時間。
俺に与えられたのは兄弟と、ジアンだった。
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『いつから心の中に君が生きたのか』を読んでいただきありがとうございます!
取り敢えず、ヨ皇子様とジアンも何とか引っ付きました
来週からはこの続きと二人のチョットした小話を書かせていただきますので、気が向いたら読んでいただけると嬉しいです。
では、ここまで読んでいただきありがとうございました!