nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
※こちらは『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』も関係する二次小説になります。
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2021年12月
ふらつきながらも私を引っ張り自分の足で歩くジョンヒョン。
並木道の歩道を歩き、車道には時折ライトを眩しく光らせて車が通る。何も言葉を発しないジョンヒョンの背中を眺めてただ歩く。その背中は私を拒絶しているようで。
おじさんへの気持ちが叶わなかった時よりひどく胸が痛くて。ただ寄り添っていた。ううん。ただそばに置かれていただけなのに何でこんなに胸が痛くなるのだろう。
ずいぶん歩いてジョンヒョンの家に帰って来た。
外では色々な音がしたのに、玄関のドアが閉まると静けさで耳が痛くなりそうだった。
「近いうちにここを出て行け。新しい家をみつけてやるから」
「え?」
リビングで私に背中を向けたままネクタイを緩めているジョンヒョン。落ち着いた声で何事も無いように、全然大したことじゃないように。平然と私を突き放す。
『このぬいぐるみ、飽きたからもういらない』とでも言うように。
「俺は女のために何かを手放す気はない。それに、お前には他に場所がある」
「……ジョンヒョンの方が」
「……俺が何だ?」
「ジョンヒョンには、他に場所がある。例え前世だったとしても今も兄弟が周りにいて、一緒に働いて、気遣ってくれて、愛されて。……フゲの人たちも優しくしてくれるし、好きだけど。仲間だけど。集まるけど。本当の帰る場所じゃない。私の帰る場所なんてどこにもない」
目が熱くなる。
泣かない。
泣かない。
絶対に泣かない。
何度も心で呟いて、背中を向けたままのジョンヒョンから離れ、寝室のクローゼットへ向かう。そこに置いてある少しだけしかない私の荷物。その中でも本当に必要な数点だけを取り出して寝室を出る。リビングでシャツの袖のボタンを外すジョンヒョンを横目に静かに家を後にした。
家を出たら、気が緩んだのか少し頬が熱くなり、冷たくなる。繰り返すその間隔が短くなって。エレベーターが一階に着く頃には喉の奥が熱くなり、声にならない声が出て。でも早くこの場から離れたくて。
誰かの帰る場所になりたかった。
誰かに帰る場所になって欲しかった。
だけど、それはジョンヒョン以外はイヤだった。
ジョンヒョンの帰る場所になりたかった。
ジョンヒョンが帰る場所になりたかった。
フゲ以外の場所は思いつかなくて、終電を前に地下鉄の駅に向かおうと重たい気持ちを引きずって泣きながら歩き続けた。