nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

※こちらは『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』も関係する二次小説になります。

 

今回はウン様目線です~^^

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2021年12月

 

「おい、ウン。ジアンはどこだ?」

 

最近請け負ったシステムの基礎を作ることに気分が乗って、週末にも関わらず残業をしていた時。突然システム部のドアを開けて部屋を見回すと、俺に向かって真っすぐ近づいて来たヨ兄上。開口一番がその言葉だった。

 

「今日は終業時刻になったらすぐに帰って行ったよ。連絡してみたら?」

 

当然のように言ったけど、チッと舌打ちをしただけで携帯を取り出す素振りはない。ため息を一つ吐き、俺を睨むようにして見る。

 

「おい、ウン。奢ってやる。飲みに行くぞ」

 

ヨ兄上からの珍しい誘い。何だか面白そうな予感がして一も二もなく飛びついた。もちろんこんな面白そうなこと、他の兄弟に教えないわけはない。こっそりみんなにSNSで連絡して『何人来るかな?』と考える。ウォン兄上は面白そうだと、ジョンは腹を満たすために来そうだと予想した。だけど蓋を開けてみたらビックリ。ム兄上まで揃っていて珍しく兄弟8人での飲み会となった。こんなことウォン兄上が結婚する時以来。

 

相変わらず不機嫌さを丸出しにしたヨ兄上。それをよそに集まったメンバーがそれぞれ話し始める。

『ウク、ミョンさんはいいのか?』とソ兄上が気遣って言えば、『出産を前に実家にウニョンたちを連れて泊りに行っているから、今日は大丈夫だ』と言い。『こっちは朝、ハジンがチェリョンとうちで会うと喜んで仕事に行ったよ。今日はソルファと女三人で朝まで騒いでいるかもな』とウォン兄上と顔をあわせて笑っていた。ム兄上も『仕事が落ち着いたところだったから丁度良かった』と焼酎のビンに手を伸ばしながら言い、ペガはム兄上が取ろうとした焼酎のビンを先に取り、『お疲れさまでした』と労いながらグラスに焼酎を注ぐ。

 

「ヨ兄上は何を悩んでいるんですか?」

 

で、おバカなジョンは直球でヨ兄上に聞いた。さすがの俺もその聞き方はまずいだろうと思うが、ギロリとジョンを睨んだヨ兄上は何も言わず焼酎を一気に飲み干した。

 

「悩んでなんかいない」

 

そう言ってなおも手酌で焼酎を煽って、悩んでいることが丸分かりで。だけどそんな様子を見せるヨ兄上が珍しく、嬉しくもあって、俺は隣に座って小さな声で愚痴る内容を聞いていた。

結局、愚痴の中身は‟ジアンがいない”ということ。

フゲの知り合いの店に飲みに行くとメールが来ていたことにだいぶ時間が経ってから気がつき、慌ててシステム部まで来たのがさっき。

『飲みに行けばいい』と強い口調では言っているが、淋しそうな表情が今までのヨ兄上からは意外で笑える。

 

不機嫌さを残しながらも兄弟の話に加わり、ニヒルな笑いを浮かべることもあった。それが変わったのは9時前後にそれぞれに対して電話やメールが来た後だった。ヨ兄上だけ鳴らない電話。それを部屋の隅に追いやり続けて焼酎を煽り始める。

当然だけどそんな飲み方をして机に突っ伏したヨ兄上を見て、俺はジアンを呼び出した。

 

 

 

居酒屋にやって来たジアンは俺たちを見ると淋しそうな顔をした気がしたけど、それも一瞬だけ。ソ兄上の『覚悟はあるのか』という言葉に戸惑いを覚えたようで。でもそれはソ兄上からしたら優しさでもある。俺たち兄弟は少なからず心に傷がある。それを受け入れてもらえないなら、お互いの傷が深くならないうちに離れた方が良いから。ジアン自身も傷を負っているし、ましてやヨ兄上の傷も深いだろう。それは俺に向ける目が時々表している。

でも、ジアンも傷を舐め合うだけじゃなくて、ヨ兄上を救いたいと思ってくれている。

ヨ兄上の苦しさを見せてもらえているなら大丈夫な気がした。

 

「……君が本気なら、俺たちは何も言わない。きっとヨ兄上は」

 

「うるさい。……おい、ウン。これで払っておけ」

 

「ジョンヒョン……」

 

潰れていたヨ兄上がソ兄上の言葉を止め、ふらつく足取りでジアンを引っ張って店から出て行く後ろ姿を見ながら、みんなは呆然という言葉に近い表情をしていて。そんな中一番驚いていたジョンが声を上げた。

 

「い、今。今の!『ジョンヒョン』って!『ジョンヒョン』って呼び捨てだった!あ、あのヨ兄上がっ!呼び捨てを許してるなんて!だってイ・ジアンってソルファと大して歳は変わらないですよね!?」

 

そう、この韓国では年上を敬うことが当然で。ましてやヨ兄上とジアンは一回り以上違う。みんなが驚くのは普通だ。さらにヨ兄上がそれを許しているところがどれだけジアンを自分の中に入れているかが分かる。

 

「うん、そうなんだよねー。ジアンに聞いたら『心のなかでいつも‟ユ・ジョンヒョン”ってムカついて呼んでたから、今さら‟さん”付けや‟オッパ”なんて無理』だって。最初に呼び捨てにした時のヨ兄上の反応も『ニヤッて笑った』だって」

 

キムチをつまみながらヨ兄上のカードの恩恵を受けるため、メニュー表を引き寄せて次は何を頼もうか考える。

 

「余計なことを言った、か?」

 

ソ兄上の心配するような言葉にペガが被せた。

 

「……でもヨ兄上も何か悩んでいたのでしょう?あんな泥酔した姿を昔も今も見たことがありません。それにあの子にも覚悟がないとお互いが傷つくのは確かだ。聞いたのは悪いことではなかったと思います。だけど、ヨ兄上も年上として引っ張っていけばいいのに」

 

「いや。そもそもヨ兄上は恋愛なんてしたことがないから、どうしていいのか分からないんじゃないか?だって高麗の夫人とは三人とも政治的に婚姻したし。今も女を寄せ付けないだろ?飲んでいる時に近寄って来ても無視するし。ある意味女は苦手だよ、ヨ兄上は。それに余計な話だけど、あの二人まだ男女の関係じゃないでしょ」

 

サラッと言うウォン兄上にみんなの驚きの視線が集中した。さすがに俺もその発言には目が見開いて、かなり動揺してしまった。

 

「お、おい。ウォン。それは、あれだ」

 

「そ、そうだ。ウォンよ、それはプライベート。いや、プライバシーか」

 

「プライバシーの侵害か名誉棄損もありえるぞ、ウォン。例え兄弟でもヨならやる」

 

まごつくソ兄上と、常識を教えようとするウク兄上。法律を持ち出すム兄上。もちろんそんなもの関係ないヤツもいる。それがウォン兄上。

 

「いや、だってイ・ジアンはまだどう見ても子供ですよ。ヨ兄上を知りたそうにしている子供」

 

「えぇ?うぅん、でもさ。ヨ兄上とジアンって半年は同棲してるじゃん。それで何もないって有り得ないでしょ?」

 

「何!?」

 

ウォン兄上の言葉に半信半疑の俺が言った内容にみんなの視線が一斉に集中した。その驚く姿に逆に驚いてしまい、飛び出してきそうな俺の可愛い心臓の上に守るように手を当てる。

 

「えぇ!?みんな知らなかったの?」

 

「イ・ジアン……。ヨ兄上と暮らせるなんて相当強いヤツだな。確かに最近一緒にジムへ行くのが減りました。というか帰りに送ってくれなくなった。だからだったんだ……」

 

ジョンの発言同様に、それぞれの考えに耽っていた時、ソ兄上がポツリと言った。

 

「何となく……。ヨ兄上の気持ちも理解できるな」

 

 

 

 

 

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