nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

※こちらは『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』も関係する二次小説になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2021年12月

 

仕事が終わってすぐに会社を出て、また『ジョンヒの家』に来た。まだお店が始まったばかりの時間だったから他の人たちは誰もいなくて、一人でカウンターに座って作業するジョンヒさんを手伝いながら向かい合って座っていた。

 

「別に……家政婦とかじゃない。むしろ家政婦が週二回来るから、あまり家のことはしなくて良いし、それを求められているわけじゃない。お金もジョンヒョンの方が持ってるし。何のために一緒にいるのか、本当によく分からないんです」

 

「そう?あいつ、ジアンを大切にしてそうだったけど」

 

仕込みの手を休めず、私をチラッと見て言うジョンヒさん。だけどその言葉に私は納得できなかった。

 

「大切?ぬいぐるみみたいに一緒に眠るだけで?」

 

 

あぁ、そうか。

ぬいぐるみのように抱きしめていると安心するからなのかも。

 

 

自分で言った言葉になぜか今まで悩んでいた疑問がストンと解決できた気がした。だけどそんな私に向かってニッコリと笑うジョンヒさん。

 

「あいつ、何歳なの?」

 

「えっと……37?」

 

「ジアンが24歳でしょ?そりゃ躊躇するわよ。あんたは21歳で45歳だったドンフンを好きになったくらいだから気にしないだろうけど。愛があれば歳の差なんて関係ないとは言うけど、気にしない人ばかりじゃないわ」

 

もっとジョンヒさんの話を聞いてみたかったけど、お店のドアが開きいつものメンバーが集まり出した店でそれはできなくて。カウンターで一人、ほとんど進まないお酒を飲み続けた。

 

 

ジョンヒョンは年齢なんて気にするタイプじゃない。

 

 

やっぱり、腑に落ちたのは‟私=ぬいぐるみ”という結論。そう答えを出した時、私の携帯が鳴った。表示はベクさん。私が会社を出るときは気分が乗ったとかで残業すると言っていた。だから今進めているシステムに不具合が出たのかと思い電話を取ると、全然違う言葉が聞こえてきた。

 

『ジア~ン。今どこにいる?ヨ兄上がお前がいないってうるさいんだけどぉ』

 

「は?」

 

 

ベクさんからの電話で柄にもなく足早にフゲから地下鉄に乗り、ジョンヒョンがお気に入りだという最初に二人で行った居酒屋に向かう。店のドアを開けるとベクさんが私に気がついて手をあげた。

 

「あ、ジアン!ここ。ヨ兄上、珍しく潰れちゃったよ。てか初めて見る。こんなの」

 

席に近づいてみると、前と同じように机に突っ伏しているジョンヒョンがいた。でもその周りには社長を含めた数人がいて。ベクさんだけだと思っていたのに会社で見たことがある顔も、見たことがない顔もあった。

接待でもないのにこんな大人数で飲むジョンヒョンを想像できず、ましてや人前で酔いつぶれてしまうなんて。よっぽど心を許している証拠。

 

 

この人には私以外にも居場所はある……。

 

 

そう思うと無性に淋しくなった。

 

「……お疲れ様です。ベクさん、あの」

 

戸惑い気味にそれだけ言うと、ベクさんが言った。

 

「あぁ、え~と。ほら、みんなアレだよ。昔の」

 

その言葉で『あぁ、高麗の』と理解できた。だけど社長とアプリチームのメンバーが全員と、優秀らしいと噂の税理士もそうだとは思わなかったから驚き。それに見たことがない真面目そうな二人も、‟前世の記憶がある”のかと。

 

「イ・ジアン。君はヨ兄上から聞いているんだってな。ウンから聞いた。それならヨ兄上を受け止める覚悟はあるのか?」

 

「え?」

 

突然の社長の言葉に意味が分からず疑問の声を上げた。

 

「君が表面を見てヨ兄上に近づいているとは思っていない。だが、同情だとか、馴れ合いの気持ちだけならお互いが傷つくだけだ。中途半端に近づかないで欲しい。今ならまだ間に合うだろう」

 

「……私の痛みをもらってくれるって、言いました。自分の痛みが増えるのは大したことじゃないって。そんな優しさしか見せられない人だから、私を見つけてくれた。……だけど、時々見せる苦しそうな表情を見ると、救われたいと思っているはず。私も救えたらと思うけど、どうしていいのか分かりません。私はぬいぐるみみたいに、何もできない……」

 

自分の発した言葉。分かっていたはずなのに、口にすると酷く傷ついた。どうすればジョンヒョンを救えるのか。どうしたらジョンヒョンの心の中に入れるのか。

 

 

結局、私ではダメなのかもしれない。

だけど離れたくない……。

 

 

「……君が本気なら、俺たちは何も言わない。きっとヨ兄上は」

 

「うるさい」

 

部屋に低い声が響き、机からゆっくりと体を起こしたジョンヒョン。私の手首を掴みよろけながら立った。

 

「おい。ウン。これで払っておけ」

 

「ジョンヒョン……」

 

財布からクレジットカードを出してテーブルに放り投げ、そして私を引っ張るように店を出た。

 

 

 

 

 

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村