nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
また、こちらの二次小説はドラマ、『私のおじさん』のネタバレが含まれますのでご注意ください。
そして以前も少しだけ書きましたが、もう一度おさらいと出て来る人のご紹介…。
『私のおじさん』のあらすじ…
ジアンは耳の不自由な祖母と二人で暮らしていました。幼い頃は友人だったグァンイル。その父が借金取りとして祖母に暴力を振るい借金を回収しようとした時に、ジアンが誤って殺してしまいます。そのことで心に影があるジアンですが、派遣先の上司である‟おじさん”のドンフンとフゲという町のみんなの優しさに触れ、心を開く話です。
今回のお話で少し出て来る人たち
ドンフン…おじさん(ジアンの好きになった人)
サンフン…おじさんの兄
ギフン…おじさんの弟
ユラ…ギフンの元恋人。今は恋人?
ジョンヒ…おじさんの同級生、おじさんの親友が恋人だったが若い頃突然出家された。『ジョンヒの家』という飲み屋を経営して、毎晩フゲの仲間が集まる。
では、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです!
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時計を届けた日、当然のようにジョンヒョンは私を家まで送った。
正しくは自分の家まで。
私の家の扉の前まで来るとすぐに『荷物をまとめろ』と指示し、嫌がる私を車に乗せて自分の家まで連れて帰った。怒って理由を聞くと建物のセキュリティが悪すぎると文句を言ったが、幼い頃からこんな家が常だった私は憤慨するけど無視された。
そしてその日からジョンヒョンは私を抱きかかえて寝るようになった。
私が先に寝ていても、仕事が明け方に終わって帰って来て電池が切れたようにどこかで寝てしまっていても。起きた時には必ずベッドでジョンヒョンに抱きかかえられている。背中からはあの日のようにうなされることもなく微かな寝息が聞こえてくる。
でも本当に寝るだけ。
いくら恋愛事からかけ離れて過ごしてきた私でも分かる。
だってキスもした。一緒のベッドに寝ている。それ以上のことがあってもおかしくない。
それともホントに痛みをもらうだけのつもりだったとか……?
「ジアン、どうしたのよ?暗い顔して」
久し振りに『ジョンヒの家』に来てカウンターに座っていたら、ジョンヒさんに聞かれた。みんなも歓迎してくれて、あっという間に出来上がっていつも通りお店の中はお祭り状態。その中にはサンフンさんもギフンさんも、もちろんおじさんもいる。
「その顔は、男の悩みね」
顔を近づけてニヤリと笑って、おじさんたちに聞こえないように小さな声で言った。言い当てられたことに驚いた私は平静を装い周りを伺ったけど、みんなはサッカーの話で盛り上がっていて気にもしていなかったことにホッとする。
「……一緒に、暮らしてる」
「ジアンが!?」
大きな声で叫ぶジョンヒさんにみんながこちらを見る気配が分かるけど、私は振り返ることもなく無視した。そうすればみんなすぐに元のように盛り上がることが分かっていたから。ジョンヒさんも『何でもないわ』と言いながらみんなに顎で戻るように指示すると、さっきみたいに近づいて聞いてきた。
「いつから?」
「半年くらい前から」
「……で、何に悩んでいるの?」
ジョンヒさんは聞いてくるけど、こんな悩みは言えなかった。でも私の隣にドスンッ!と座ったユラさんが言った。
「オンニ!一緒に暮らして悩むことなんてただ一つ。体の相性についてですよ!」
酔っているユラさんの声は大きくて、騒がしいはずの『ジョンヒの家』は一瞬で静けさを取り戻した。みんながユラさんを見てギフンさんへ視線を移すけど、首を横に振るギフンさん。
「ジアン!大丈夫!そんな男とは別れなさい!」
呂律の回っていない言葉でとどめを刺した。
気まずそうに顔を見合わせて、視線をさまよわせるみんなに何も言えず。ジョンヒさんも、言うだけ言ってカウンターに突っ伏したユラさんの肩を強く押した。
Prrrrr
静かになったお店の中で携帯が鳴ると、みんなが慌てて自分の携帯を探し出した。自分の着信音じゃないって分かっているくせに。そんなみんなと表示された名前を見てため息を小さく吐き、指をスライドさせた。
「もしもし」
『外にいる』
「……」
無言で携帯を切って席を立つ。お店の中に入ることはできるけど、あの性格は馴染めるタイプの人じゃない。居酒屋に行っても静かに飲むタイプだし、あの威圧的な態度もここの人たちとは相容れないから。
「帰ります。また、来ます」
ぎこちなく笑う人たちに軽く頭を下げて店を出る。その私のすぐ後ろをジョンヒさんがついて来て。店の前に車を停めていたジョンヒョンがムカつくくらい優雅に降りて来た。その姿を見たジョンヒさんが言う。
「趣味、変わったわね」
「……別に。全然タイプじゃないんですけどね」
ジョンヒさんを振り返り、自分でも苦い顔をしてボソリと言った言葉に上からいつもの声が降ってくる。
「フッ。お前はホントに面白いな」
「この子が面白い?」
「あぁ、思っていることをすべて顔に出すからな」
自分のことを棚に上げるけど、ジョンヒョンの態度は年上の人に対するものじゃないと思っていた。だけどジョンヒさんは気にもせず吸っていたタバコの煙を吐き出してからジョンヒョンに言った。
「……あんた、勝手に出家したらダメよ」
「……経は腐るほど読んだ。だからももう見たくもない」
「フフッ。じゃあいいわ。ジアン、……。また来なさい」
ジョンヒさんは私を抱き寄せて耳元で囁く。
『大丈夫。ゆっくり愛されなさい』
どこまで解っているか分からないけど、そんなアドバイスをくれた。
無言の車内。赤信号で停まると前の車のテールランプが眩しくて目を細めた。
「……あそこがお前の大事な場所なのは分かっている。行くなとは言わない。だが、必ず帰ってこい」
「え?……うん」
そして今日も私はジョンヒョンに包まれて眠る。
一つ違うことはジョンヒョンの唇が髪に当たっていること。
「それで、痛みが無くなるの?」