nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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カランコエ : 幸福を告げる
人に気を遣うハヌルにしては珍しく遅い時間に連絡があり、今から俺の家に来るというので心配になりすぐにOKを出した。
俺たちは双子でも二卵性で、気持ちがいつも通じ合うということはないが他の兄弟よりは小さな変化をお互いが感じ取りやすかった。話す声から緊張していることを感じたが深刻な話ではないと思いつつ、夜中に近い時間に来るハヌルが気がかりだった。
だけどやって来たハヌルは笑顔で、手には缶ビールの入ったビニール袋を下げてスーツ姿のまま二階に入って来た。
「悪いな、こんな時間に。どうしてもジフに報告したくてさ」
「あぁ、いいさ。その顔じゃ悪いことでもないようだからな」
ビニール袋から取り出し差し出されたビールを受け取り、二人掛けのソファに座る。
「久しぶりに来たな。昔はみんなでここに住んでたのに、リフォームして今はすっかりジフの家になってるな」
立ったままリビングを眺めるハヌルを俺の横に座るようにスペースを空けて促しつつ、缶ビールのプルタブを開けた。プシュッという音と小さなシュワシュワという美味そうな音。軽く缶ビールを上げてハヌルに飲む意思を見せた。
「何だ?昔話をするために来たのか?」
「いや、違うよ。ジフは俺の片割れだから一番に報告したくてさ。……俺、結婚することになったよ。さっきやっと良い返事をもらえたんだ」
「そうか!めでたいな。前から付き合っていたあの人か?」
ハヌルの慶事を聞き、すぐに以前紹介してもらった女性が頭に浮かんだ。口元まで持ってきていた缶ビールをテーブルに置きながら、控えめで優しそうな人でハヌルと並んだ姿はとてもよく似合っていたことを思い出した。
「あぁ、そうだ。シウンだよ。初めは断られたんだけど、あの子のおかげでシウンの気持ちが変わってくれたんだ」
テーブルに置かれた缶ビールを俺に渡し、自分の缶ビールを開けて乾杯をし、嬉しそうにビールを口にするハヌル。だけどハヌルの口から出た‟あの子”が誰だか気になり。まさかと思いつつ、だけど二人の繋がりが考えられずに聞いてみた。
「あの子って誰だ?」
「ほら、ジュヒョクのガールフレンドの……えっと」
よほど機嫌が良いのかすでに酔っているのか、珍しくフワフワしているハヌルに俺は確認するように聞いた。
「コ・ハジン、か?」
「そうそう!コ・ハジンさん!シウンからプロポーズを断られた時に丁度彼女がいて、シウンをどこかに引っ張って行ってしまったんだ。戸惑っていたら急にジュヒョクから電話が掛かってきて、三人で電話をしている状態になったんだけど、シウンとコ・ハジンさんが話している声が聞こえてきて。シウンの悩んでいることを知ることができたんだ。シウンに悩んでいることは気にするなと説得して何とかさっきOKをもらえたよ」
もう一本缶ビールを開けて飲みだしたハヌルは上機嫌で。
「あの子のおかげだよ」
すごく嬉しそうな顔をして言った。
ハヌルの結婚はすごく嬉しい。だが、ハヌルの口から出てきたあの女の名前が俺の心に影を作った。