nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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アーティチョーク : 警告
ジョンヒョン兄さんといつもの居酒屋で待ち合わせをした。
不思議なことだが昔からジョンヒョン兄さんとジスとは双子であるウクより食の好みが似ている。酒が飲めるようになったころからは酒の好みも三人同じだと分かったが、ジスはウルサイからジョンヒョン兄さんと二人で飲みに行くことが多かった。
今日もカウンターに二人並んで座り、ショットグラスに焼酎を入れて、いつも通りポツリポツリと酒の話や仕事の話、家族の話などをつまみに飲んでいると兄さんの携帯が鳴った。断りを入れた兄さんが話し始めたその携帯からは、高い声が微かに漏れ聞こえてきて相手が女だと分かった。
「フッ。分かったよ、言っておく。それといい加減、オッパって呼べよ」
普段は愛想笑いもほとんどしないし、今は特に親しい女もいなかったはず。いや、もともと彼女がいたとしても今みたいに心を許した態度を取る姿を見たことがなかった。
だからその砕けた柔らかい笑いに驚いて、おもわずグラスから視線を兄さんに向けた。
「サノ兄さんもオッパと呼ばれたら喜ぶぞ。じゃあな」
話を聞いているとさらにサノ兄さんの名前が出てきたことに困惑する。
通話を切り携帯をカウンターに置いた兄さんに、普段なら聞くことのない女性関係の質問がつい口から出てしまった。
「誰だったんだ?サノ兄さんも知っている人なんだろ?会社の人か?」
「あぁ、ジュヒョクの彼女だ。コ・ハジン。あいつ、面白いな」
そう言って今のやり取りを思い出したのか、また優しい笑いをする兄さんに当惑する。兄弟の彼女に会ったとしてもこんな態度を取ったことがなかったのに。それだけジュヒョクの”相手”だとみんなが受け入れて、ジュヒョク以外にも俺の家族に溶け込んでいくあの女が怖かった。
「どうした?黙って」
「……何で連絡を取り合ってるんだ?」
『あぁ』と納得したという感じの表情をしたジョンヒョン兄さんが、ショットグラスを持ち上げ一口飲んだ。その動きは弟の俺でもカッコよく見えて、誇るべきなのに胸がモヤモヤとする。
「あいつとたまたま飲み屋で会った時に俺たちの会社の話になったんだよ。そしたらサノ兄さんを呼び出せって言って電話させられて色々話したんだ。まぁ、良い方に転んだってことだ。それにしてもあいつ、ホントに面白い。ジュヒョクとも仲良くやっているみたいだし、あいつなら妹になるのは楽しみだな」
「……ジフ、どうした?黙って」
訝し気な顔で兄さんが聞いてくるが、俺はまともな答えが言えずに焼酎を飲み干した。
自分のテリトリーに入って来られることがこんなに怖いなんて。
まさかジョンヒョン兄さんとこんなに仲良くなれるヤツだなんて。
「兄さん……」
「何だ?」
「あいつはジュヒョクの……だ」
声を低くして言うと驚いたような顔をして俺の顔を見た兄さん。
「ジュヒョクの‟女”に何も思うはずがない。フッ、変なこと言うな」
当然のような顔で笑いながら焼酎を飲むジョンヒョン兄さんの言葉に、自分の感情がおかしいことを改めて突きつけられた。