nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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オーソニガラム : 動揺

 

 

オーソニガラム

 

 

先日からの仕事である『高麗風俗画展』での装花もやっと今日で最終日になった。花と花瓶を回収したらこの場所に来ることも無くなり、画を見るたびに自分の中に起こる不快な感情がなくなると安堵し、終了時間を過ぎて入った会場。

だが誰もいないはずのその会場にはよく見知った人物である弟が床に座り、弟の長い脚の間には髪の長い女がいて。俺が声をかけるとその女は驚き、ジュヒョクの服を掴んで振り返った。

 

大きな瞳はさっきまで泣いていたのか赤く、少しだけあいた唇は俺を誘っているようで。全身でこの女は危険だと思った。

 

近づいてはいけない、と。

 

だが俺の警戒する気持ちに気が付かないジュヒョクはその女と一緒に片づけを手伝ってくれ、終わった後は当然のように女を飲みに誘っていた。

俺は片づけを手伝った礼として、後部座席に積んであった花を一輪差し出した。

その花が女の手に渡る時に気が付いたハーデンべルギアの花言葉。

 

 

俺は、この女とまた会いたいのか……?

だけどこの女は俺を……怖がっているだろ?

 

 

名前を聞いた時に警戒心を露わにした表情だったことを思い出す。差し出した花を引っ込めようとした時、戸惑いつつ受け取った女はジュヒョクに引っ張られどこかへと消えた。俺は視界からいなくなったジュヒョクと女の歩いて行った方を見て、自分の気持ちにしばらく悩みその場に立ち尽くした。

 

 

 

 

 

ドンドン!ドンドンドン!

店舗の上階に住んでいる俺のベッドからインターホンが鳴る合間に家のドアを叩く音が聞こえる。三階にいる俺に聞こえるくらいのかなり大きな音で近所迷惑であるということと、明日も朝から花の買い付けがあるのにと思いながら、重たい体をベッドから出し一階まで降りて玄関のドアを開ける。

 

「ジフ兄さん!助かった!こいつ持って」

 

俺に向かって投げ出されたのはさっきジュヒョクと一緒に飲みに出かけた髪の長い女。

 

「おい!」

 

「あ~疲れた!ハジン、酔いつぶれて家がどこか言わないし、どうしようかと思ったよ。兄さん、水貰うね」

 

俺の家によく泊るジュヒョク。もともと実家だったこの家を改装していることもあり勝手知ったるという感じでいつものように二階に上がり、冷蔵庫を開けて水のボトルを取り出しゴクゴクと飲むジュヒョクに無償に怒りが湧いた。

 

「おい!俺は朝から仕事だぞ!」

 

「僕もだよ。シャワー借りるね」

 

「ジュヒョクッ!こいつは!?」

 

「え?あ~、ハジン?ハジンなら兄さんと一緒に寝ればいいよ」

 

そう言い置き、さっさと風呂場に行くジュヒョクの言葉に唖然としながら、抱きかかえていた女をソファに降ろし、しょうがなく三階の俺のベッドから布団を取ってきて掛けてやる。

ソファの足元にはだらしなく開け放たれた女のバッグがあり、その中には夕方俺が渡したハーデンべルギアが綺麗なハンカチを濡らして茎に優しく巻かれてあった。

 

「コ・ハジン……。何なんだ、こいつは」

 

酔いつぶれた大人のはずなのに子供のような寝顔に笑いが漏れ、白い頬をつついてみると小さな声で『ペガ様』と漏れ、俺の動きは固まった。

 

 

小さなころからジュヒョクが言っていることがあった。みなで笑っていたが、本人はいたって本気だった。今、ジュヒョクのその言葉が耳に強くこだます。

 

 

だから……近づいてはいけないと思ったんだ。

 

 

 

 

 

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