nabisonyoです。
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こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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11月14日(月) 22:52
午後からパラパラと降り始めた雨は今も続いている。雨のせいで少しだけ客入りが悪くなった日。通常勤務の後に棚卸を行い、時計が11時を指したところでやっと残業を終えて携帯を見るとテさんからメールが入っていた。
‟仕事が終わったら連絡して”
メッセージの受信時間はつい数分前で。何だろうと思いつつ、電話を掛けるとコール音もほとんどしないうちに、すぐにテさんが出た。
『お店の外にいるんだ。軽く夕飯食べない?』
突然の誘いに帰るだけだからと気にしていなかった化粧をすぐに直して。今日はスキニーのデニムに黒のタートルネック。ライダースジャケットにボアが付いているという、いわゆる‟デート”の格好ではない。だからせめてもとお団子にしていた髪をほどき、ふんわりと緩くカールさせてみた。
店から数メートル離れた通りに面した場所にテさんが黒い傘をさして立っていたので、慌てて近づいて声をかけた。
「お待たせしました。だいぶ待ちましたか?」
「いや、僕も大学で文献を読んでいたらこんな時間になっていて。帰りにハジンさんの店の前を通ったら明かりがついていたから連絡したんだ」
傘のないわたしを傘に入れてくれ、いつもより少しだけ距離が近い。
少し疲れた顔をしているだろうわたしと違って、テさんはいつも通りニコニコしてその笑顔は誰かを想わせる。元気で、素直だった……誰か。
「この近くにある店のカルグクスが美味しいんだ。食べよう」
誰かは誰だっけと考えていると、テさんが指さした方へと並んで歩く先。そこには屋台があって、ビニールシートで作られた簡易店内に入った。テさんが注文してくれて、熱くて美味しいカルグクスにお腹も満足し、二人で店を出ようと軒先に立つ。ビニールシートから出る前に降りやまない暗い空を見上げてわたしは言った。
「雨、止まないですね」
「そうだね。でも僕はこれくらいの雨なら好きだよ」
そう言って手の平を空にかざした。彼の大きな手の平に集まる雨粒。
ポツン。ポツン。
その姿が絵になり眺めていると、落ちてくる雨粒を見ながらテさんは言った。
「昔は雨が降らなかったら雨乞いをしたんだ。もちろん高麗時代も。でも何度雨乞いをしても雨が降らない時は皇帝が龍の子じゃないとされてしまう。あ、龍は水の神様ってこと。神の子じゃないと思われたらいけない。じゃあ、どうしたか分かる?」
「えぇ?」
またいきなり始まった授業。嫌いだった国史の授業。だけどテさんの仕事柄よく話が出てくることは当然で。苦笑いで考える。でもそんな時間も最近は楽しんでいる自分がいた。昔ほど拒絶反応が出ないのは先生がいいからか。それとも気になる人がする話だからか。
「う~ん。何だろう?アチコチで井戸を掘って地下水をみんなに配った?」
「残念!‟雨が降るまで雨乞いを続ける”、だよ」
ちょっと意地悪な顔でニッコリと笑ったテさんの表情に既視感を覚えた。