nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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一人暗闇の中にたたずむ。音も無い空間。
‟千年の後。一人の女の命が尽きるだろう。
それが、お前の愛する者の魂だ。
お前は自身の命と引き換えにできるか?”
頭に響いてくる声に返事をする。
「もちろん。かまわない」
結局、ヘ・スの新しい魂の名前も年齢も何も教えられずに生まれ変わった俺は、2016年5月にその場所で起こるという出来事のためだけに生きてきた。
有難いことにウンの生まれ変わりがまた俺の弟としてそばにいてくれ、毎年誕生日にはプレゼントを贈ることもできた。
ベクはあの頃と違い、俺の顔に傷がないためか最初から俺に懐いてくれた。俺がアメリカの大学院へ進めば兵役を終えてベクも留学してくるほどに。そのころ両親が亡くなったこともあり、心細かったこともあるかもしれない。
そして留学先でベクに彼女ができたと会わせてもらえば、相手はスンドクで。二人の運命を感じた。そして二人を見ていると、俺がヘ・スに一目会うことが叶うという期待が大きくなった。
Prrrrr Prrrrr
目的の場所まで運転していた時に掛かってきたベクからの電話。ハンドルのボタンを押し、ハンズフリーで応答する。
『兄さん?あのさ』
「悪い、ベク。今急いでるんだ。……そうだ!これから俺はヘ・スを助けに行く。ベク、お前はずっと俺の大事な弟だ。絶対に幸せになれ。愛してる」
話し出そうとするベクに言葉をかぶせた。
もうベクに会うことができない。もっと色々なことをしてやりたかったと思うが、それでもヘ・スを助けることが俺の最優先事項だった。
ベクには悪いが、お前にはスンドクがいる。二人が一緒なら大丈夫だ。
だが、ヘ・スは俺が助けなければいけない。
最後にベクの声が聞けて良かった。
暗闇の中で指定された場所。指定された時間。
見当たらないヘ・スを公園中探して周囲に視線を巡らす。
その時、階段下にある桟橋から大きな声が聞こえた。
「何でわたしなのよ~!」
ヘ・スだっ!
柵から身を乗り出し、声のした方へ視線を移してヘ・スの姿を見つけた。
湖に飛び込んで溺れる子供に向かって泳いでいくヘ・スを目で捉えつつ、階段を駆け下り湖へと足を進めようとした時だった。
「陛下、今のあの女性はヘ・スお嬢様ではありません。今飛び込めば、あなたが死ぬかもしれませんよ?」
そこにはよく見知った顔の人物がいた。髪を下ろし、汚れた服を着て。だがその目には外見とはかけ離れた力を持ったチェ・ジモンが俺を見据えて言った。
「あれはヘ・スだ!俺がヘ・スを必ず助けるんだ!」
そう言って湖に飛び込んだ。
沈んでいくヘ・スの手を取るために。
ただもう一度、ヘ・スに会うために。