nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
※こちらは『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』も関係する二次小説になります。
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2021年5月
携帯が近くて振動している。無意識に枕元に手を這わせ、それを探し当て電話に出ていた。
「も……しもし」
寝起きの掠れる声で答えると、知らない声が聞こえてきた。
『え……?あなたは誰ですか?』
私の携帯に掛けてきたのに名前を聞くなんて変な人だと思いながら、寝起きの回らない頭で質問に答えていた。
「イ・ジアンですけど。あなたは?」
『……ユ・ジョンヒョンさんの携帯じゃないんですか?』
ユ・ジョンヒョン……?
一瞬にして頭が回り始めて隣でまだ寝ているユ・ジョンヒョンを叩くように起こし、耳に携帯を押し付けるけどすぐに不愉快そうに通話を切って携帯を放り投げた。その姿に呆然としているとまた携帯が振動し始める。床に落ちた携帯はさっきとは違い明らかに大きな振動音がする。まずい状況になったことは分かった。さっきの女の人は彼女だったんじゃないの?朝から寝起きの私が電話に出たらそれは‟浮気”だ。おじさんの時に浮気される相手の気持ちを見て来た私には、自分がしている側だと思われるのは絶対にイヤだった。
ベッドにもう一度寝る態勢になっていたユ・ジョンヒョンが体を起こし、私を見たのはそんなことを考えていた時だった。
「何でお前がここにいるんだ?」
訝し気な顔をして聞いてくる姿に苛立ちを覚えて文句を言うが、『俺は悪くない』とでもいう態度に苛立ちが怒りに変わった。だけどそれよりさっきの女の人の方が重要だと思い直し、聞いてみた。
「電話の人、誤解してない?大丈夫なの?」
「ん?あぁ、弟の妻だから気にするな。お前さえ名前を言わなかったら問題ない」
弟の妻……。それは男女の関係ではない?
名前さえ言わなかったらってどういうこと?
後輩であり上司という立場の人が奥さんの不倫相手だったおじさんを見ていたから、弟の妻だと言われても私には問題がないと納得して良い理由にはならなかった。
「まさか、言ったのか?」
無言の私に呆れたようなユ・ジョンヒョンに言い訳をボソボソと伝える。だけどユ・ジョンヒョンが気にしていたのは別のことだったらしい。さっき言った弟が社長だったからで。社員同士の関係がマズイという意味で言ったことだと理解した。でも『まぁ、いいか』とあっさり諦めて二度寝しようとするユ・ジョンヒョンを揺すって起こす。上司とそんな関係になる女はお払い箱にされる可能性がある。せっかくやりたい仕事をみつけた私にはとても痛いことだから。だけどユ・ジョンヒョンは社長が気にすることはないとだけ言い、時計を見た。
「送っていく」
正直、家から放り出されて終わりだと思っていた。送って行くなんて言葉に驚いて一人で帰れることを伝えると、私を上から下までジロジロ見て笑いながら言った。
「その恰好でか?スーツも顔も大変なことになってるぞ」
スゴくムカつくヤツ。
誰のせいでこんなことになっているのか分かっているはずなのに。