nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

※こちらは『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』も関係する二次小説になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2021年5月

 

ユ・ジョンヒョンが小さく笑った後、そんなに時間も置かずに急に居酒屋のテーブルに突っ伏した。驚いて肩を揺すると寝ているだけだと分かりホッとしたのと同時に怒りが湧いた。お店の人に手伝ってもらってタクシーに乗せるけど、どこに行っていいかも分からない。しょうがなく携帯を取り出しタップする。

 

『ほーい。何だよ?俺、今彼女といるから手短にねー』

 

「ベクさん。営業部長の家、知ってますか?」

 

『え?ヨ兄上の家?』

 

「ヨ兄上?」

 

『あ~、何でもない。こっちの話。う~ん、確かどっかに……。スンドクゥ、ヨ兄上の家ってどこだっけ?行くことはできるんだけどちゃんとした住所は俺、分からないだよねぇ。……あ、これ?ジアン、すぐにメールするから』

 

「ありがとうございます。助かります」

 

同じシステム部に籍を置き、アプリチームにも参加しているワン・ベクさんがユ・ジョンヒョンと仲が良かったことを思い出し電話を掛けた。何とか住所を手に入れタクシーを出してもらうけど、目的地に着いてもユ・ジョンヒョンは起きてくれず。細そうに思えた体は筋肉質だからなのか思っていたより重くて何とか支えてエントランスまで行くと、ユ・ジョンヒョンはふらつく脚でセキュリティを解除し上階へと進んだ。

玄関に放置して帰ろうと思っていたのに、私にもたれたまま靴を放り投げるように脱いで、私の靴まで脱がせ引っ張るように部屋へ上がらされる。踏ん張って阻止しようとするけど酔っているのにその力は強くて逃げられない。

まずいことになったという自覚はあったけど、力の差にはどうしようもなくて。自分の運はトコトンないんだと諦めようと思った。広いベッドに倒れるように転び本当に危険を感じたのに、ユ・ジョンヒョンは私を抱え込むようにすぐに深い眠りについた。

 

「何なの。一体……」

 

抱え込まれるように包まれて、スーツ越しに体温がジンワリと伝わって来て段々と私の瞼も落ちてくる。

 

 

人ってスゴイ。

こんな状況でも眠たくなるなんて。

 

 

自分の状況に呆れ、覚えていないほど久し振りに人の温もりを感じながら、私も眠りへと誘われた。

 

 

 

ハッキリとした息苦しさを感じて目が覚める。自分のいる場所が一瞬どこか分からず、背中の温かさと締め付けられるような苦しさをさらに感じて、ようやくユ・ジョンヒョンの家だと分かった時、後ろから声が聞こえてきた。

 

「ん……。や、めろ……も……やめてくれ」

 

悲痛な声に首だけ動かすと、汗をかき苦しそうに眉を寄せているユ・ジョンヒョンがいた。寝ぼけているのか私の体をきつく締めつけてくる。自分が苦しいこともあり、ユ・ジョンヒョンの手を掴むとビクリと反応したけど、その力が緩むことはなかった。

 

「もう、許してくれ……」

 

ユ・ジョンヒョンから出た言葉と一筋の涙は諦めと、深い悲しみを含んでいた。

 

「大丈夫。……もう大丈夫だから。みんな過去のこと。みんな許してくれてるから」

 

暗い部屋の中で、寝ているユ・ジョンヒョンに向かって囁いた言葉は、本当は自分に対して言った言葉だったのかもしれない。

 

 

この人も……私と一緒。

心に深い傷を負っている。

 

 

会社の主流として働き、有能で、女性も放っておかないような人なのに。

自分と同じような傷を持っているのだと分かった。

 

 

 

 

 

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