nabisonyoです。
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こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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2020年7月
俺が言ったことを聞いてもまだグズグズしているソルファが次第にウトウトしだした。泣き疲れたかと思ったが、よく見るとテーブルの上に置いてあった俺の飲みかけのワイングラスが空になり、ミネラルウォーターは開いていなかった。
酒を飲んだせいか。
ソルファの肩に手を掛け軽く揺すって起こそうとするがなかなか反応しない。
「おい、ソルファ。寝るな。ベッドが一つしかない。ウヒのところに帰れ」
「いや。今日はおじさんと寝る。だって……」
そう言って俺にしがみついて来た。しょうがなくベッドに寝かせるが、余計眠りが深くなっただけのように思えた。ウンと二人部屋だったジョンの部屋に移ればいいかと思い、一先ず汗を流すためにシャワーを浴びていた。
微かに音が聞こえてソルファが起きたのかと思ったが、音がさらに大きくなったように思いシャワーのコックをひねって湯を止める。ガタガタと鳴る音に疑問を持ち、濡れる体を軽く拭きタオルを腰に巻きつけバスルームのドアを開けると目の前にはジョンがいた。
突然の侵入者に驚き固まっているとスゴイ形相をしたジョンが俺に拳を振り上げる。咄嗟のことで上手く避け切れず頬を掠った拳。その腕を捻りジョンを押さえつけた。
「ヨ兄上!いくら兄上でもソルファを襲うなんてありえない!俺の大事なソルファに!殺してやる!」
普段のジョンからは考えられないような言葉が発せられ、ジョンの後ろにいたのかペガも俺と一緒にジョンを押さえようと弱いながらも奮闘していた。
「何を言っているんだ!?ソルファは酒を飲んで寝ているだけだ!」
「……え?」
いつの間にか涙まで流しながら暴れていたジョンの動きが止まった。
「だ、だって兄上の部屋に内線を掛けたらソルファが出てグズグズ泣きながらヨ兄上と寝てるって……」
「確かに一緒に寝たいとは言われたが、『お父さんと同じ香りがして安心する』と言われたぞ。前世が兄弟ってだけで香りまで一緒のわけあるか。チッ」
文句を言いつつ深い眠りのせいかこの騒ぎでも起きないソルファを見た後、ジョンとペガが入って来たドアを見ると、蹴破って入って来たのかドアの金具が外れ散々な状態になっていた。その様子を見てため息をつき、その原因であるジョンを見ると怒られた犬のように眉毛を下げシュンとしていた。
「おい、ジョン。ソルファがそんなに大事なんだろう?もう自分で最後まで守ったらどうだ?勘違いをして俺に迷惑をかけるな」
「え?大事ですけど、どういうことですか?」
ジョンは心底分からないという表情で俺を見ている。その姿にため息を小さく吐き言った。
「ペガに嫉妬してソルファを泣かすな」
「……嫉妬?」
コテンと首をかしげ未だに意味が分からないというジョンをよそに、俺の言葉の意味を理解したペガは目を見開いた。
「ヨ兄上!まさか、ジョンがソルファを?」
「え?どういうことですか?ペガ兄上」
自分のことが何も分かっていないジョンに二人でため息をつき、放っておくのも良いかと思ったが結局はまた面倒が増えるだけだと思い直した。そしてジョンに分かるようにどう説明してやるか少し考える。
「ジョン。俺はソルファを女として見ることはできないし、抱けない。お前はどうだ?」
「な!何を言ってるんですか、兄上。できるわけないです!俺の大事な子です!」
「そうか。じゃあ他の女は抱けるか?まぁ、俺はもちろん気が向けば誰かは抱ける。ペガは……ウヒ以外もう無理だろう。……お前は?」
「抱けま……考えられないです。そんなことより今、一番大事でそばで見守っていなきゃいけないのは、ソルファだけです」
「それが答えだ。今はそんなことはできないが、もうお前は他の女を見ることができない。あとは自分でどうするか考えろ」
「俺はお前の部屋で寝るからな。お前はホテルにドアを壊したことを連絡して直してもらってからソルファと寝ろ。部屋のカードキー出せ。あ、ソルファの宿泊代とドアの修理代は自分で出せよ!」
バスルームで着替え、スーツケースとジョンから奪い取ったカードキーを手に部屋を出た。その俺の後ろをついてくるペガ。
「兄上は最初からジョンの気持ちを知ってたんですか?」
「いや、知っていたのはソルファの気持ちだけだ。ジョンはさっき分かった。親としての気持ちがまだ強いだろうがソルファのためにはいいんじゃないか?」
ジョンの部屋の前でペガにジョンの荷物を渡してから別れ、ようやく長い一日が終わりベッドへと横になった。
白い天井を見上げると、さっき美術館で見た朝の光を浴びる池が浮かんでくる。それと遠い昔に見た景色がまた重なり始めたので目を強く閉じた。
胸が苦しくなって起き上がると真っ暗な部屋。快適なはずの空調の中で汗をかいていた。
ベッドの横に置いてある時計を見ると夜が明ける前の深い暗闇の時間を指している。
俺の場所はどこにあるのか……。
立てた膝に肘を置き、顔を覆った。
「ヨ兄上、ソ兄上に何て言おう?ソルファと付き合うことになったって言ったらソ兄上に殺されてしまいます」
出張から帰って来てしばらくするとジョンが俺の部屋に入って来て開口一番に言った。
「おい、俺はオールラウンダーだという自負はあるが、それは仕事であって恋愛悩み相談ではないぞ!いい加減にしろ!」
「え?何でも屋じゃないの?ウン兄上がヨ兄上なら何でも聞いてくれるって」
数分後、俺にシメられているウンと、俺の有難い教えによって蛇に睨まれた蛙のごとくソに睨まれているジョンがいることは当然のことだった。
『ソよ。まったく知らない、どこの馬の骨だか分からない奴にソルファを取られるより、まだジョンの方が良いだろう?仕事でも家庭でもジョンが万一変なことをおこさないか監視できるぞ?』
渋々。いや、‟渋”がだいぶ多く付くが、二人が付き合うことができたのはソに俺がそう口添えしたからに違いない。俺の心労を思うと‟俺のおかげ”だと思うくらいは許されるだろう。
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ジョン皇子様のお話でした。
実は『君が僕を全部忘れたから』の2話の終わりで、真剣にソルファとヨ皇子様をくっつけようかと思っていました夜中にお水もらうシーン、私だったらドキッとしそうですから(笑)
ここまで読んでいただきありがとうございました!