nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2017年4月上旬

 

週明けに営業部の仕事を片付けプロジェクトルームに入ると暗い表情をしているペガがいた。だが俺はあえて声をかけなかった。なぜなら面倒だから。そう、それなのに。俺の後から部屋に入って来た空気を読むことができないヤツが口を開いた。

 

「ペガ兄上。どうしたんですか?」

 

「……何でもない。すまないな、ジョン」

 

何でもないという割にはため息をつき、暗い表情のまま遅々として仕事が進まない。いや、進めようとしないペガを見ていると段々と腹が立ってきた。

 

「おい!いい加減にしろ。仕事をしないなら出て行け!」

 

俺の言葉に顔を俯いたペガと、たしなめるように声をかけてきたソ。

 

「ヨ兄上」

 

ソは何も話さず、俺を促してプロジェクトルームを出てソの自室へと連れて行く。ペガは悪くないとでもいうようなその行動に、俺は不機嫌さを丸出しにして応接用のソファへ乱雑に座った。

 

「……昨日。ハジンと三人でキョン・ジュヒョンって子に会った。見た目はウヒだったが記憶は無いようだった。最初は普通に話していたんだ。だけど婚約者って男が現れて……」

 

「そうか」

 

しばらく沈黙が続き静かな部屋。

 

「だが……俺は謝らんぞ。仕事は別だ。ただでさえプロジェクトメンバーはお前と親しいと社内のみんなが認識している。そんなヤツが仕事もせずにダラダラしていたらお前もペガも信用を失うぞ。分かっているだろう?」

 

「……注意しておく」

 

ソの言葉に頷ぎ、打ち合わせのために外出してそのまま直帰することを伝え会社を出た。向かった先であるホテルのラウンジで打ち合わせをしていると、背中合わせに座った人物たちから気になる声が聞こえてきた。

 

「ジュヒョン……。……ペガ……」

 

聞こえてきたのはフランス語で、そこから出てきたのは‟ジュヒョン”と‟ペガ”という単語。そんなことはウヒ以外の人物からはそうそう有り得ないだろう。そう思いながら商談が終わり立ち上がって相手と握手を交わす。

 

「まだ仕事をしていくので、ここは私が。来月から宜しくお願いします」

 

商談相手と別れ、また同じ一人掛けのソファに腰を下ろした。背中からはフランス語が男の声で流れてくる。だが、女はただ声を詰まらせてペガの名前を呟き、声を押し殺して泣いているようだった。

 

 

これは……。

高麗の記憶が無いなんて、嘘だな。

 

 

ソファから立ち上がり、背中合わせだった二人の横に立つ。男は突然横に立った俺を訝し気に見上げるが、女は気が付かないのか顔を俯いたまま。見えない顔はウヒかどうか分からない。一緒なのは高麗と同じように流れる長い髪だけ。だがそんなヤツはどこにでもいる。間違いがないと思いつつ声をかけた。

 

「ウヒ」

 

声をかけた俺を勢いよく見上げた顔はやはりウヒで、俺の顔を認識して泣いていた赤い目を大きく見開いた。

その表情に満足した俺は口角を上げた。

 

 

 

 

 

直帰の予定を変更し、ホテルから会社へ戻りプロジェクトルームに入ると珍しくウォンまでいて兄弟が揃っていた。俺の顔を見ると気まずそうな顔をするペガは相変わらず仕事が手につかなかったようだ。チッと舌打ちをして乱雑にペガの前の席に座る。

 

「さっきホテルで商談をしていたらウヒに会った」

 

「え?」

 

「男と一緒だった。一緒に泊まっていたようだ。これからフランスへ帰るらしい。荷物を持っていた」

 

傷ついた表情をして顔を伏せたペガ。周りの弟たちは焦ったように俺とペガを見比べる。だがそれを無視して後を続けた。

 

「ウヒは高麗の記憶があった」

 

俺の言葉にすぐに顔を上げたペガ。

 

「俺は今度出張でデザインカンファレンスに行く。お前はどうする?」

 

「?……行きます!」

 

ペガは勢いよく立ち上がり、大きく返事をした。

 

 

 

 

 

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