nabisonyoです。

当ブログにお越しいただきありがとうございます。

こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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2016年11月

皆で食事をした日から三週間が経ち、今日のソは朝から心ここにあらずのため仕事にならず、その姿を見て仕事をすることが馬鹿らしくなり早く帰ることにした。

どれくらい振りか分からない定時退社をし、地下駐車場に置いてある車に乗った時だった。ム兄上から電話が入り、イヤな予感がしつつ何があったのかと思いながら出ると慌てたような声が聞こえてきた。

 

「悪い!ヨよ。今、ミョンがうちの事務所に来ていたんだが泣きながら出て行ってしまったんだよ。僕はまだ仕事があるから追いかけられないんだ。ヨが追いかけてくれないか?」

 

「ウクはどうした?」

 

「それが……ウクが高麗の記憶があることを知って昨日ケンカしたそうなんだよ。お互い記憶が無いと思って今まで過ごしていたんだ。僕も敢えて教えなかったのが仇になった。興奮しているミョンにウクを迎えに行かせても逆効果だと思う。多分いつもの場所にいると思うんだ。迎えに行ってくれないか?場所は……」

 

「……分かった」

 

ム兄上に言われて南山谷へと向かう。

こんなところにいるのかと思いながら公園の中、ミョンを探して歩いていると、あまり人がいないような道で背の低い大きな石に座り俯いている姿を見つけた。

今にも消えていなくなりそうな雰囲気の女。洋服を着ているのになぜか高麗時代に戻ったのではないかと思わせるような女だった。

 

「夫人」

 

俺が声をかけるとビクリと反応し、ゆっくりと顔を上げた。そして俺と目が合うと驚いて目を見開き、そして立ち上がって皇族に対して礼をするように深く頭を下げた。

 

「お久しぶりでございます。ヨ皇子様」

 

「あぁ」

 

それだけしか言わない。高麗時代のように目下の者から話しかけることもしない、礼儀正しいウクの妻だった。さすがにここで偶然会ったとは言えない俺は、正直にム兄上から言われて迎えに来たことをミョンに言った。

 

「なぜここなんだ?」

 

メインの韓屋の立ち並ぶ場所を通り過ぎ、程よく広い道。植樹されて等間隔に並ぶ樹と石を重ねて作った低い石塀。特別何か目に引くようなものがあるわけでもない。なぜそれが‟いつの場所”なりうるのかが気になった。

 

「ここが一番、ウク皇子様の邸宅に似ているんです。私が亡くなる直前にウク皇子様と一緒に散歩した場所。雪が降ったら一人でこの場所に来て、最後の時のことを思い出し、今がどれだけ幸せかを何度も確認しました」

 

11月のソウルの夜は冷える。いや、夏だったとしてもこのままここにいたらミョンは消えてしまうのではないかと思えた。

 

「帰るぞ。送る」

 

俺にそう言われてしまえば従うしかないミョンを車に乗せ、暖房を最大にする。俺から話すこともなく、ただ沈黙の中、車を進ませた。しばらくして車内の空気が温まって来た頃に、意外にもミョンが自分から話し出した。視線は手元を見て、ポツリポツリと。

 

「今の皇太子様とは小さい頃からの付き合いです。ウク皇子様が働く病院の理事長は私の父です。皇太子様のお父様は病院の顧問弁護士で、家族ぐるみの付き合いでした。お互いに小さい頃から高麗のことを覚えていて、私が頼りにさせていただいています」

 

「……ウク皇子様は父の病院で働いていたらしく、ある日父にお見合いを勧められて会ってみることになりました。驚きました。待っていたのはウク皇子様だったから。だけど、また会えたのが嬉しくて、高麗の記憶が無いウク皇子様ならまた一からやり直して、愛し合えるかもと期待をしたんです。父が外科医の方が良かったかもとずっと言っていましたが、あの時はウク皇子様以外と結婚はできないと思っていました。だけど、ウク皇子様はあの子とまた出会った。……この幸せを失うことが分かっていたら。今は父の言う通り外科医の方が良かったのかもと思います」

 

「なぜ俺にそんな話をするんだ?」

 

「なぜでしょう?ヨ皇子様なら私の気持ちを一刀両断してくれそう、だからかもしれません。気にせず進めとも、キッパリ諦めろとも。興味がないからと無視することも。今の私には気持ちが良いくらいスッキリしそうですから」

 

俺を見て少し笑った顔は、高麗の時より強さがあるように思えた。

 

 

 

 

 

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こちらは本編24話、46話の話になります。

ソ皇子様とハジンが夕飯デート中の裏話ですねひらめき電球

ここまで読んでいただきありがとうございました!

 

 

 

 

 

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