nabisonyoです。
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こちらは『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説を書かせていただいています。ドラマのイメージを壊すとご不快の方はこちらでご遠慮ください。お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
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2017年 4月中旬 ソウル特別市
家に帰りそのままの格好でベッドに入り布団をかぶり蹲る。携帯のバイブの振動音でさえ聞くのがイヤになり電源を落とした。チャイムが鳴りドアを叩く音がしたけど、その先にいる人が誰だか分かるので耳を押さえて無視をした。
信じたくなかったけど、ジフさん本人から出た言葉は間違いのないもので。今はもう何も聞きたくなかったから。
ヘ・スさんを愛してるって言った。
じゃあ、わたしは?
何でわたしをかまったの?
何でわたしのこと『俺の人』だって言ったの?
わたのことは愛してないの?
信じようとしても、信じたいと思っても、ハヌル先生と話していたジフさんの言葉を思い出すとどうしても受け入れられなかった。ずっと「何で?」、「ヘ・スさんは誰?」、「わたしは愛されているの?」という疑問が浮かび、何度も「ジフさんはわたしじゃなくてヘ・スさんを愛している」という事実に傷ついた。
結局眠れず考え続けていたらいつの間にか朝になり、太陽の光がカーテン越しに入ってきた。のっそりと起き上がり、重たい体を動かしシャワーを浴びて準備をする。今日は遅番だから、朝から行けば会える可能性がある。あの人に話を聞く必要があると思ったから。
玄関で靴を履いていると、どこかで携帯の呼び出し音が鳴っている。なかなか鳴りやまない音を不思議に思いながらドアを開けると、ドアの前にはジフさんが座っていた。
会いたいけど、会いたくなかった彼が立ち上がりわたしに近づくけど、これ以上傷付けられるのがイヤでジフさんから一歩遠のいた。
「……昨日、ジフさんの家に行った時、ハヌル先生と話しているのを聞いた。わたしは何なの?ただの遊び?それとも代わり?『俺の人』って『俺の愛』じゃないもの。結局は自分の所有物だってことなの?」
そう、いつもジフさんはわたしを『俺の人』って言った。
普通は‟愛”を使うもの。‟俺の愛”って。
『物じゃない』って言ったから‟人”に変えただけ。結局は所有物だったってことだ。
わたしの言葉に酷く傷ついた顔をするジフさんがわたしの腕を掴むために手を伸ばした。それを振り払おうとするけど、ジフさんの両手がわたしの両手首を掴み視線をそらすことなく言った。
「苦しくても、愛しているならこの手を放すな。後悔するぞ。俺はお前を手放す気はない。二度も、同じ後悔はしない。どんなに遠くへ行ったとしても、必ずお前を見つける」
握られた手の力が強くなったけど、彼のわたしへの執着が自分の考えは正しかったのだと思えて脚の力が無くなり座り込んだ。彼を見上げると、わたしを真っすぐに見ている。
その目に惹かれたはずなのに、今はその目が怖かった。
「でも……ヘ・スさんを愛してるんでしょ?」
「……あぁ。ヘ・スを愛している。その気持ちは変わらない。だが、コ・ハジン。お前も愛している」
ほんの少しの期待を込めて聞いた。だけどアッサリと期待を裏切る言葉が返ってきた。
違うと言って欲しかった。
わたしだけだと言って欲しかった。
「何を、信じればいいの?」
絶望……その言葉がピッタリなくらい目の前が真っ暗になるようだった。
わたしはこの暗闇から出ることはできない。
それぐらい信じて、ジフさんを心の中に入れたのに。
「俺は嘘をつかない。コ・ハジン、俺はお前のそばにいるために生まれてきた。俺を信じろ」
「……今は、何も考えられません」