nabisonyoです。

当ブログへお越しいただきありがとうございます。

『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』の二次小説をメインに書かせていただいています。

ドラマのイメージを壊すとご不快に思われる方はこちらでご遠慮ください。

お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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どれくらい待っていただろうか?

途中で処置室の扉が開きジウンがストレッチャーに乗せられ運ばれていった。僕が呼びかけても苦しそうに顔を歪めて小さく「ソヒ」とだけ言った。ジウンも気になるがソヒのそばを離れることもできずに不安が押し寄せる。

数度、看護師から声を掛けられたがそれどころではなく、処置室の前に立っていた。また処置室から看護師が出て来たので慌てて捕まえ二人の容態を訪ねた。

 

「どうなってますか?娘を!妻を!お腹に子供もいるんだ。助けてくれっ!お願いだ!」

 

「落ち着いてください。もうすぐ処置が終わって先生が来ますから」

 

看護師に落ち着けと言われても落ち着けるわけもなく、僕は処置室の前を行ったり来たりし不安な気持ちを少しでも抑えようとしていた。

 

「リム・ジウンさんとオ・ソヒさんのご家族ですね?僕はERのドクターをしているワン・ジフです」

 

「ッ!?」

 

処置室から出てきた医師に顔を向けるとそれはかつての良く見知った顔だった。

 

「奥様のリム・ジウンさんの状態ですが、右腕を打撲しましたが意識もハッキリしていてご無事です。ただ事故のショックで産気づきまして今は四階の分娩室に移動しました。産科医の話では子宮口が9cmまで開いたとのことだったのでしばらくしたら産まれると思います」

 

「わ、かりました。先生、……ソヒは?」

 

驚く心を抑え、何とか声を絞り出してソヒの様子を聞いた。

 

「ソヒさんは車の窓ガラスの破片で頭に傷を負いました。出血は多く見えますが小さな傷だったので縫合も終わりました。吐き気などもないようなのでこのまま今日は入院し、明日脳の精密検査をして問題が無ければ退院できます。今は痛み止めが効いて寝ていますよ。あなたもその手の傷をちゃんと処置しましょう」

 

ジフと名乗るソは僕が車の窓ガラスを割った時にできた手の平や腕の傷を指さして言った。その言葉でようやく自分の傷に意識を向けた。そしてその声は僕に安心をくれ荒れていた心を落ち着かせてくれた。

 

「ありがとうございます……」

 

涙が堪え切れず溢れてきた。

 

「予定より半月早いですが赤ちゃんはきっとお姉ちゃんと一緒の誕生日になりたかったのかもしれませんね。元気な子が産まれますよ。これから賑やかになりますね」

 

柔らかな笑みを浮かべて言うソが目の前にいた。あの頃には想像もつかなかった優しさが溢れていた。

 

「先生!次の搬送患者が着きます!お願いします!」

 

「分かった!じゃあ、きちんと消毒をしてもらってくださいね」

 

看護師に呼ばれて足早に救急搬入口に向かうソの後ろ姿を見つめた。

 

 

お前はまた、人のために動くんだな。

そしてまた、僕の娘を救ってくれた。

 

 

「ソよ。ありがとう……」

 

 

 

 

 

時計の針が夜の10時を指そうとした頃、我が家の皇子が産まれた。

自分のことを顧みず、ソヒを抱きしめ、お腹の子をかばい、そして無事に生んでくれたベッドの上に横たわる愛しい人であるジウンの負担にならないように優しく抱きしめた。

 

「ソヒも無事だ。ありがとう、いつも僕たちを守ってくれて。ジウン、愛しているよ」

 

「良かった……。愛してる人を守るのは当然よ。サノ。私もサノを愛してる」

 

「……ジウン。子供の名前だけど。ソ、と付けたいんだ。いいかな?」

 

「いいけど、どうして?おじい様のご意見はいいの?」

 

「僕たちを救ってくれた医者の名前だよ。いくら感謝しても足りないんだ。反対されても譲れない」

 

「そう、それは当然ね。二人で大事に育てましょ?」

 

「あぁ。ジウン、ゆっくり休んでくれ。僕はソヒを見てくるよ。お休み。愛してるよ」

 

ジウンがいる分娩室を後にし、新生児室でソの顔を見てからソヒの部屋へ行く。ドアを開くと小さな明かりが灯る中で静かな寝息を立てる姿にホッとした。

 

ベッドの横に置いてあった椅子に座り、まだまだ小さなソヒの手を握る。すると微かに動き、ソヒの目がゆっくりと開いた。

 

「アッパ?」

 

喉が渇いて上手く声が出ないのか掠れ気味に呼ばれ、僕は握っていた手と反対の手でソヒの右側の頭を撫でた。左側には大きなガーゼが覆われている。

 

「アッパァ、怖かったよぅ」

 

声を震わせて泣き出したソヒに胸が痛む。僕もベッドに乗り一緒に横になり、ソヒを胸に抱きしめて背中をゆっくり撫でた。

 

「もう大丈夫だ。アッパがいる。今日はもう寝て、目が覚めたらソに会いに行こう?」

 

「ソ?」

 

「あぁ、お前の可愛い弟だよ。さっき産まれた。だからもう泣き止んで休みなさい。会いに行けなくなるぞ」

 

「イヤ!行く!もう寝る。でもアッパ、ずっと傍にいてね?こうしていてね?」

 

「あぁ、ずっと傍にいるよ。アッパだからね」

 

そして僕はこの小さなお姫様を抱きしめた。少しでもいい夢に包まれるようにと。朝になったら笑顔になれるようにと。

愛おしいこの子を二度と傷付けないようにと。

 

 

そして静かに明かりを消した。

 

 

 

 

 

今日は我が家のお姫様と皇子様の誕生日だ。

毎年この日の僕は忙しい。家族と一緒に誕生日のお祝いをする。ジウンを手伝って料理をし、部屋の飾りつけをする時もあれば、外に食べに行く時もある。プレゼントのリクエストをもらい一緒に子供たちと買い物に行くこともある。

 

そしてもう一つ大事なこと。

ERへの寄付。

 

あの日から毎年匿名で寄付を行っている。ソがあそこで働いているから。

兄として少しでも弟を助けたかった。

 

またいつか、兄と弟として会えることを願っている。

 

ソよ……。

 

 

 

 

 

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読んでいただきありがとうございました!

最初は『月の光の中で』に出て来る事故にしようかと思いましたが、もともとこの話を考えていなかったので絡められなかったことと、少しでも幸せな話を書きたかったので今回のお話になりました。

ジフがハジンと出会う前や出会って仲良くなる前くらいの記憶がない時を考えて書いています。

 

タイトルの『Light Out』もいつも通りEXOの曲からです。重めの曲で私の好きな曲の一つです。チェンの高い声も良いですし、やっぱりスホの綺麗な声が心にジンワリと染みます。

 

さて、残るは第八皇子、第十三皇子、第十四皇子となります。一応年齢順の予定です。あともう少し『麗~』の二次小説を書かせていただきます。宜しくお願い致します!

 

 

 

 

 

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