nabisonyoです。
当ブログへお越しいただきありがとうございます。
『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』のその後の二次小説を書かせていただいています。
ドラマのイメージを壊すとご不快に思われる方はこちらでご遠慮ください。
お許しいただける方は少しでも楽しんでいただけると幸いです。
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「お兄ちゃんて如才ないよね?」
夏も終わり、夜は肌寒くなってきた季節だった。翌日を休日に控え残業を終えた時刻は日付が変わる少し前。帰ってきた実家のリビングでネクタイを緩めていた俺は言われた。それを発したのはソファにだらしなくもたれ、ブランケットに包まりながらアイスを食べているギジュ。今年で24になったのに相変わらず子供のようで女の色気はゼロだった。
「どうした、いきなり?」
「勉強も運動も世渡り?も、適当にやっているみたいだけど今まで結構いい成績だったし、周りとも上手くやってたし。就職も良い所にできて、きっと仕事も卒なくこなしてるだろうし。きっとどんなに忙しくても彼女のご機嫌も上手く取ってるんでしょ?要領がいいってことかな?兄妹なのに私と全然違う」
「ギジュは優しい。でもそれは良い面も悪い面もあるからな。それに一つのことに対して丁寧に時間をかけているからそう思うだけだ。どんなこともお前のペースで進めばいいんだよ。それに奴にもご機嫌を取るんじゃなく、言いたいことを言えるのは良いことだ。礼儀は必要だが我慢しすぎると続かないからな」
いつもは明るく前向きな妹がこんな時は何かある時だ。
おそらくこの言い方からして大学時代から付き合っている彼氏とケンカでもしたんだろうと踏んだ。この彼氏の前に付き合った奴には言いたいことも言えずに我慢したあげく振られるということが二度続いた。今の奴には言いたいことも言えるらしく、その分ケンカもするし落ち込むこともあるようだ。
さて、次の休みにどこかへ連れて行ってやるか?
気分を晴らしてやろうとそんなことを考えていたら、スプーンをくわえて黙っていたギジュが真面目な顔をして俺を見つめていた。
「何だ?」
「ありがと、お兄ちゃん」
微笑を浮かべて礼を言うとさっさとアイスを食べ終え自分の部屋へと戻って行った。
数日が経ち、休日に午前中まで出勤をして会社から実家に顔を出した。
ワイシャツからネクタイを引っ張り歩いていると、リビングから顔を出したギジュが笑顔で俺の前に立つ。「おかえり。ちょうど良かった」と言い、早くリビングへ入るように促された。
「お兄ちゃん。私、彼と結婚することにしたの」
相手の腕を軽く触りつつ少し照れて幸せそうに笑い、俺に伝えた内容。リビングでは両親と相手の男も交えて歓談の場ができ始めた。その賑やかな雰囲気の元は、妹の嬉しい報告だった。
「おめでとう。幸せになれよ」
「ありがとう。お兄ちゃん」
ギジュの目を見て言うと満面の笑みを浮かべて返事が返ってきた。
笑い声が溢れているその場をこっそりと離れ家を出た。
気持ちを隠すことは普段から得意でもある。二人へ笑って返事ができたはずだと思う。だけど本当に自分が笑えていたのか自信がなかった。
青から茜色へと変わり始める空を眺めフラフラと歩き、何となく誰もいない職場のビルを目指した。高層階から見るガラスの外の景色。目の前には吸い込まれるような赤い夕陽がビルの間にゆっくりと落ちていく。
ギジュが、結婚……。
幸せそうに笑っていたじゃないか。大丈夫。今生のあいつは必ず幸せになれる。
あいつを愛し、包んでくれるヤツを見つけたんだ。
そしてあいつ自身、一番愛する人を見つけた。
兄として、心から祝福をしよう……。
俺はこの時、改めて贖罪の意味を理解する。
赤い夕陽を眺めていると知らないうちに頬に一筋、何かが伝った。
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ワン・ウォンとチェリョンのお話、いかがでしたでしょうか?
名前…ユ・ソヌ(庾善友)は庾は高麗時代の母の姓、善友はウォン役のユン・ソヌさんの芸名からです。チェリョンの名前、ギジュ(基周)もチェリョン役のチン・ギジュさんの芸名からお借りしました。
ギジュの結婚相手はチャン・ギヨンさんの外見をイメージ(『ここに来て抱きしめて』の警察学校時代)しました。
そしてタイトルの『My Turn To Cry』はいつもながらEXOの曲名からいただきました。よく泣いていた別れた彼女の幸せを祈り、彼女の代わりに自分が泣くよ…というような曲です。ライブでベッキョンがピアノ弾き語りをしているソロ&ショートver.のイメージで二次小説は書きましたが、フルver.も素敵です。さらにライブのスホさんショートver.も素敵すぎです……。