nabisonyoです。
当ブログにお越しいただきありがとうございます。
『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』のその後の二次小説を書かせてもらっています。
ドラマのイメージを壊すとご不快に思われる方はこちらでご遠慮ください。
お許しいただける方は私の拙い文章で少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
宜しくお願い致します。
今回は2話で終わる話を書きました。
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俺には七つ違いの可愛い妹がいる。妹が母の腹の中に包まれて、この世に産まれて来る前からその存在を感じていた。
彼女だと……。
そして産まれた瞬間から俺に守られる使命を与えられたその存在。俺はその存在を赤ん坊の頃から甲斐甲斐しく世話してやり、学校へ行くようになれば勉強もみて、スポーツもできるまで教えてやった。両親も呆れるくらい妹のことを大事に大事にしてきた。
この俺がそこまでする理由は前世にある。
それは彼女への贖罪。
前世も今生も彼女への情は女として愛するものではない。
前世は弱き者として。また、自分を絶対的なものとして慕い動いてくれる者として。都合がよく、裏切らない存在。そして今生は守るべき妹として。
その守るべき大事な妹が今、泣きそうな顔をしている。いや、心はすでに泣いているだろう。
たまたま大学からの帰りに寄った本屋で、こっそりと自分の鞄へ本を入れようとしている妹を見た。俺はしばらく黙って妹の姿を横から見ていると、一瞬ギュッと目を閉じたあと勢いよく持っていた本を元の棚へと戻した。そこまでの行動を見た俺はその後ろへと回り小さな声で話し掛けた。
「ギジュ、万引きは犯罪だ。そこでやめて正解だ」
声を掛けられて明らかにビクリと大きく肩が跳ね、泣きそうな顔でこちらを振り返った。
「お兄ちゃん……」
「泣いているじゃないか」
まだ零れていない涙だが、心の中で号泣しているのが分かる。
ギジュは成長するにつれ、相手の心を優先するようになり、いつも笑って自分の不満を上手く隠すようになった。だから周囲のやつらはその明るい笑顔を見て、心の傷に気が付くことはなかった。
それは俺にも時々隠せるくらいで、だからここ最近のギジュの小さな変化に気が付かなかった。俺は心の中で自分を叱責する。
「こんなことを強要するのは友達じゃないぞ」
ギジュの後ろに立った俺を見て、一目散に逃げた同級生であろう女子数人の後ろ姿をチラッと見て言った。
「出よう」
ギジュは元の場所へと置いた本を改めて見てから店を出ると、本当に涙を流し始めた。俺は声を殺して泣き出したギジュを胸に抱きしめて背中を撫でた。
「お兄ちゃん、怖かった。怖かったよぉ」
「そうだな、怖かったな。でもお前は芯の強い子だ。こんなことで負けないくらい。だけど、何かあったらすぐ俺に言え。絶対に助けてやるから」
そう。お前を守ることが今生の俺の使命。
ワン・ウォン(王垣)だったユ・ソヌ(庾善友)がチェリョン(采伶)だったユ・ギジュ(庾基周)に対する贖罪だ。
人は贖罪と聞くと罪を償う行い、悔い改める行いとして、さぞ辛いだろうと思いそうだが、俺はこの贖罪にとても満足している。前世から縁のある『人』が幸せになるように行動すればいいだけなのだから……。
いつかお前を守ることができる男が現れたら。
喜んでこの手を離そう。