nabisonyoです。
当ブログへお越しいただきありがとうございます。
『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』のその後の二次小説を書かせていただいています。
ドラマのイメージを壊すとご不快に思われる方はこちらでご遠慮ください。
お許しいただける方は私の拙い文章ですが楽しんでいただけたら幸いです。
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「ペガ様……ありがとう」
ハジンは最後の手紙を読み終えた。そして全ての手紙を丁寧に木箱へ戻し、その状態を少しの間眺めてから蓋を閉めた。蓋に付いている飾りを優しく撫で、そして千年前を思い窓の外の空へと視線を移した。手紙を読み始めた時は綺麗な水色だった空は、いつの間にか茜色を見せ始めていた。
「わたしが変わらなければ人も変わらないと思っていた」
ハジンは誰に言うでもなく話し始めた。
「そしてわたしは自分が変わっていないと思っていた。だけどあの時。ヘ・スとして逝く前、第四皇子である彼だけを思い出した。わたしは陛下が変わったと思っていたから。だけどそれは思い違いだった。大事な人、守りたい人……。そう、愛する人が増えた。それだけ。同じように陛下にも民という守るべき人たちが増えただけ。守る方法が今と違っていただけ」
「わたしは心が弱くて彼の強い意志と向き合えなかった。彼だって今にも折れそうな心をその意志で支えていただけだったのに」
「どこにいても、どんな時代でも、二人だけの世界ではいられない」
「でも、愛する心はずっと二人の中にあった」
「この手紙が教えてくれた」
四十六通の手紙を涙と微笑みと共に読み終えたハジンは、ペガからの友情を受けて心が温かくなっていた。昨日は高麗での記憶が戻り、絶望的な悲しみが心を締めた。それが今日は嘘のように穏やかだった。
ハジンは自分の横にずっと座っていたジフへ顔を向けた。
二人は言葉を交わさず見つめ合い。……微かに微笑み合った。
「陛……下?」
ハジンは変わらず愛している人を呼んだ。
「ヘ・ス……。会いたかった」
ジフも変わらず愛している人の千年前の名前を呼んだ。そしてハジンの手を取り、もう片方の手でハジンの頬を優しく包んだ。
「コ・ハジン(高昰辰)、いい名前だな」
「皇帝という星(辰)に正しい(昰)行いをさせるため、お前が高麗に来てくれた。星(太陽)を招く私(昭)の元に……。ピッタリの名前だ」
「ワン・ジフさんは『志しが厚い(深い思いやり)』、ですね。実は優しい陛下にピッタリの名前ですね。フフッ」
「……見つけてくれて、逢いに来てくれて、ありがとうございます」
失われた時を感じないほど自然に二人は微笑みあった。
窓の外は茜色が広がり、その色に紛れて西の空にはまだ見えない繊月が二人の時を刻み始めていた。
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『Butterfly Effect』を読んでいただきありがとうございます。
これで王郁ver.は終わりとなります。