nabisonyoです。

当ブログへお越しいただきありがとうございます。

 

『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』のその後の二次小説を書かせていただいていまます。

ドラマのイメージを壊すとご不快に思われる方はこちらでご遠慮ください。

お許しいただける方は私の拙い文章ですが楽しんでいただけたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ハジンはまだ心臓がドキドキしていて、それを少しでも抑えようと胸に手を当てていた。その手には先ほどジフから渡された青地に白い小さな水玉模様のハンカチがあった。

 

 

ほんの一時間にも満たない、その短い時間。

光宗の肖像画の前で忘れていた高麗での出来事を全て思い出した。

 

ワン・ウクとの恋と彼の嘘。

 

ワン・ソの真っ直ぐな愛により二人は結ばれ、そして確執が起こり、別れたこと。

 

 

展示会場で独り、光宗への後悔と慕情に涙を流していた時、ペガの使いだという驚くべき容姿の男性が現れた。促されるまま手を取り、建物を出て、明らかに高級さを主張している黒塗りのリムジンに乗るように言われてやっと我に返った。

 

「あ、あなたは一体誰なんですかっ!?」

 

思ったより強い口調になり『しまった!』と思った時にはすでに周囲から好奇な視線を受けてしまい、思わず首を竦めた。

 

そんなハジンに対してジフは落ち着いた様子で答えた。

 

「申し遅れました。私はワン・ジフ。ワングループの専務をしています」

 

そうジフは伝えると、見るからに高級そうな艶がある紺色のスーツの内側に手を入れ、名刺入れを取り出した。そして分厚い上質な白い紙に濃紺の箔押しをされた名刺を一枚、ハジンへと差し出した。ハジンはその名刺を受け取るが文字は頭に入らず、考えも纏まらずにジッと名刺を見つめていた。その様子を見ていたジフはしばらくするとハジンへと話を続けた。

 

「ペガは私の先祖にあたります。彼の遺言によりコ・ハジンさんに見ていただきたい物があります。貴重な物なので持ち歩いてはいないのです。できれば車に乗っていただき移動したいのですが……?」

 

ジフの丁寧な物言いにハジンは困惑顔をしていたが、覚悟を決めたようでもあった。

 

「……わかりました」

 

返事を聞いたジフはハジンが車に乗るためにドアを開けて、頭をぶつけないように気を遣った。高級スーツを着こなし優雅な動きで一連の動作をするジフに、先ほどまでのドキドキとは違う理由でハジンの胸はドキドキした。

 

 

車が滑らかに走り出すと、ジフはハジンに30分ほど車で移動することと、自分には急ぎの仕事があるので車内で処理をすることを伝えた。問題ないとうなずいて答えるハジンに、ジフはまた口の端で微笑みを作り、その後は真剣な顔で書類に目を通し始めた。

 

 

ワングループの専務というのは本当なのか?ペガの遺言とは何だろう。そう、ハジンが考えていると携帯の着信音が車内に響いた。ジフはハジンに断りを入れ話しだす。ハジンは話を聞かないよう心掛けてはいたが、耳から自然に入ってくる内容は指示を出す側の人間のもので、隣に座るワン・ジフという人物が本当に専務というような地位の高い肩書を持つ人物なのだと実感し驚いた。

 

ハジンはジフの通話中に車窓からの景色を見るともなしに見ていた。しかし先ほど展示会場で泣いたせいか、車の心地良い揺れのせいか、それとも隣で話すジフの心地良く耳に響く低い声のせいか。ハジンはいつの間にか深い眠りに落ちていた。

 

携帯での通話を終えたジフがハジンを見ると、頭を車の窓ガラスに預け小さな寝息を立てていた。その様子にジフは微笑み、ハジンの長い髪を一房取り手の中で滑らせた。

 

「コ・ハジン(高昰辰)……か」

 

 

 

 

 

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