昼下がりの午後、外に散歩に出ていた。
いや、正確に言うと母親と喧嘩して出てきたんだけど。
ガサガサッ。
今さっきコンビニで買った紅茶を袋から取り出し一口すする。
やはり午後は紅茶に限る。
近年、紅茶を飲むのが習慣になった。
だが、決してティーポットとか葉っぱから煎れるとか
そういう紅茶マニアではない。
幼少期、母が
煎れた紅茶が不味かったのが発端である種トラウマになっていたのだけど
去年の夏休み、
叔母の家で貰った缶紅茶がとても美味しかった事がきっかけで
紅茶好きになった。
実はさっき家を出る前、母は紅茶を沸かしてくれたのだが、砂糖と塩を間違えた。
それを指摘すると
「文句あるなら自分で作れ」と言われ、喧嘩に発展し、現在に至るというワケ。
「よいしょっと」
じじ臭い掛声と共に公園のベンチに腰掛ける。再び袋からバームクーヘンを取り出しパクつく。
あぁ美味い。
「ホォホォっドゥドゥっ」
と何とも文体表記し難い声を発しながら鳩が数羽俺の前に寄ってきた。
「何だ、お前らも腹が減ってるのか?ほらっ食えよ」
バームクーヘンを細かく砕いて鳩達に蒔いてやる。
地面に蒔かれたそれを食べる為、
首を前後に動かしながら歩いてついばむ鳩達は滑稽だった。
愛くるしい動作に俺は愉快になって
「ははっ、いやしい奴らだな!もっとやろう」
と再度エサを蒔いてやる。
良く見ると太ってる鳩がやたら他の奴らより多く食ってる気がする。
痩せてる鳩を突っついて
「どけ!俺のもんだ」
というやり取りが聴こえてくるようだった。
痩せている鳩の近くに蒔いてやる。
デブ鳩は蒔かれたバームクーヘンを横取ろうとして早足になったが、
流石に間に合わなかった。
「ドゥドゥ!」と野太い鳴き声で催促し始めるデブ鳩。
「お前は、さっきから食ってるだろが。
それと少しはダイエットしろよ・・」
こんなやり取りをしていて、
俺は以前、家で飼っていたインコの事を思い出した。
『飼っていた』というのは3年前にこの世を去ったからである。
あれは高校の推薦で合格発表が決まった晴れの日だった。
掲示板に大きく張られた合格者発表の中に自分の番号を見つけた。
あの時の喜びは今でも忘れられない。
急ぎ足で家に帰って、みーの前に立った時、俺は目を疑った。
こんな喜ばしい日に俺を待っていたのは
青い羽を伸ばして動かなくなったみーの姿だったのだから。
(続く)