■徒弟制 21世紀の職人さん
弟子入り志願者ほとんどは、私のように経験が無いままやって来ます。ただ、作家さんが問題にするのは、経験の有無ではなく、昔のような徒弟制が今は通用しなくなった事だそうです。
たとえば、作家さんがお弟子さんをとった場合、しばらくは仕事の段取りをいちいち教えなくてはなりません。かえって自分一人で仕事やった方が早いそうなのです。昔は仕事をひと通り覚えると、その見返りとしてボランティアで働くお礼奉公があったそうですが、いまは仕事を覚えたら、さっさとやめ、独立してしまう‥。だから、半分無料の陶芸教室を開くような気持ちでないと、お弟子さんは採れないそうです。
まして、私の様に県外からやって来る志願者には、一方で技術を教えながら、同時に入門当所から生活の保障を考えてやらなければなりません。まるで留学生です。
作家さんの立場に立ってみると、今の社会で徒弟制を維持するのは簡単な事ではないようです。
■徒弟制が無くなって、若い人の育成は?
作家さんに代わって、その役割を担っているのが中規模のメーカーさんです。
ラインの仕事は分担がはっきりしていますから、ステップを踏みながらそれなりに即戦力になります。
そのままでは、パートの奥さんのレベルですから、仕事が終わった後、ロクロの練習をしたり、釉薬に詳しい先輩にいろいろ教えてもらったりします。自分の作品をつくる時は、メーカーの備品、色々の材料が自由に使え便利ですし、小型の試験窯もあります。
ただ、どのメーカーにもこの受け入れ体制があるとは限りません。メーカーで働いたことのある作家さんのアドバイスを受ける事ができればベストなのですが。
■資格・経験より実際に問われること。
これは、私が陶芸の仕事に就く前にアドバイスされた事をそのままお伝えした方が良いと思います。
職人さんの世界では、学歴とか資格とかは問われません。資格は「かかとに付いたご飯粒」だそうで、取っても食べられないそうです。(誇張して言い方ですから、もちろん全てではありません)どちらにしても、陶芸にはその資格制度がありません。
では、多少の経験は? ‥私はそれまでモノづくりには全く無縁だったので、陶芸教室ぐらいは一応通ったほうが、と考えた事もありました。
ある職人さんによれば、陶芸教室の展示会などを見ると、プロに負けないレベルのものも多く陶芸教室のレベルはとても高くなったそうです。それでもその職人さんは、陶芸教室はプロを養成する所ではないのでは、と言います。
■弟子入りまでに準備しておくもの。
まず、多少の貯金。修行期間中は、無料の職業訓練所で技術を身に付けさせて頂いていると考えて、収入を余りあてにしないこと。本採用のケースでも最初はお給料安いですから。この事が原因でプランが挫折しないよう、最低限の計算は立てておいた方が良いと思います。
そして、しっかりした目標。‥会社勤めから急に環境が変わり、陶器メーカーで下働きをしていた頃、皆が忙しく動き廻っている時に、ポーっとしている事が多かった私は何度か不安を感じました。‥私は、この仕事に向いているだろうか?本当に一人前の職人さんになれるだろうか?‥などなど。
先輩は、だれもが一度は通る道だから気にしない、大切なのは、目標を見失わない事、と話してくれたので、少しは安心しました。今になって考えれば、必要以上にナーバスになっていた気がします。ともかく最初の一年は、頭であれこれ考えず、手と体で仕事を覚えていくことだ、と思います。
私の場合、このふたつの事に尽きました。
最後に、まだ経験の浅い、私の拙文を読んで頂いた方に感謝します。
また、誤った見方、片寄った見方も多くあるかと思いますが、感想などお聞かせ頂ければ幸いです。
「イブ、職人をめざす」
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吹原梨枝さん
京都府在住
1971年 東京都に生まれる
1999年「八岳陶苑」入社
2004年 独立 京都府に工房
1997年 工芸展 入選
現在、器、陶小物を関西を中心に発表しています。
吹原さんは、私が初めてお知り合いになった作家さんです。
この「イブ職」をH.Pで拝見し、京都に旅行した際に工房を訪問させていただきました。
「イブ職」は、育児に埋没していた頃、私を奮い立たせるきっかけになりまし。H.Pはお仕事が忙しくおやめになりましたが、以前公開したものを「職人工舎」さんから転載させて頂きました。



