長年勤めた会社を退職した。
会社の飲み会は得意ではない。
静かそうな席にひっそり移動するのが常だった。
そんな自分に、営業部のAさんから
「送別会をしたい」と連絡が来たのは意外だった。
Aさん入社当初に、色々とサポートしていたからだと思うが
Aさんが自ら飲み会を企画するのは初めてで、とても嬉しかった。
当初はAさん含めた5人の予定だったが、噂を聞きつけたギャル姉さんが加わった。
ギャル姉さんは初対面でも、3分話せば、友達になる社交力の塊。
新規顧客を、バンバン獲得する、社内のエースだ。
Aさんに代わり、ギャル姉さんがお店選びからケーキまで用意してくれたそうで、ありがたかった。
飲み会は楽しかった。
しかし、賑やかな居酒屋では、周りの音で思考が混線する。
営業部の、頭の回転の速さとノリノリ良さについていけず、頭がオーバーヒートして、久しぶりに寝れなくなった。
自分はINFJの「提唱者」で、深く向き合うタイプ。
対してギャル姉さんはESFPの「エンターテイナー」。真逆の存在だ。
彼女の善意が、時にありがた迷惑に感じることもあった。
たとえば、社長や上司に突然電話をして
「今◯で飲んでるけど来れる?」と盛り上がる場面。
電話越しに「お世話になりました」と話すのは正直つらかった。
ギャル姉さんのパワーに場の空気を持っていかれ、一人ひとりと感謝を込めて話せなかったのが心残りだ。
Aさんが話を変えようとしてくれたが、流れは戻らなかった。
二次会ではAさんが帰ってしまい、もっと色んな話をしたかったが、消化不良のまま夜が終わった。
けれど、退職とは「卒業」でもある。
エネルギーの向きが変わり、同じ場所で生きる必要がなくなっただけのことだ。
以前は同僚のペットの名前を覚えていたが、今では咄嗟に思い出せなくなっていることに驚いた。
帰宅後、同僚達の愛猫の名前を思い出した。
頭の中で自然と、今後必要ないと思った削除されたのだと思う。
そして、気づいた。
自分は他人の目を気にしすぎている。
もっとギャル姉さんのように、自分軸全快で生きてもいい。
場を巻き込む力の大切さを知った。
多分、10年頑張っても、あのキャラにはなれない。天性の才能だ。
ギャル姉さんも、10年頑張っても思慮深くて、陰気にはなれないだろう。
たんぽぽが、バラになれないように
私は私の場所で咲けばいいのだと思う。