初めて彼の顔を見た時は思わず吹き出してしまった。

 

そのくらい彼の顔はキマッてた。

 

彼は自分の顔が明らかに変になってる事に気づいてない。

 

そこにいた1人が「誰か買い物行って来てくれ」と言うと、

 

彼が「自分行ってきます」と言って買い物に行こうとしたのでみんなで止めた。

 

その顔で外は歩かない方が良いと。

 

彼は大丈夫っすよって言ってたけど全然大丈夫じゃない。

 

こんな事にも気づかない彼はもう入院した方が良いと思った。

 

その後彼は覚醒剤を打とうとしたので「止めた方がいいんじゃない?」って言っても全然聞く耳をもたず。

 

みんなの前で1発打って帰って行った。

 

彼みたいに部屋に入って来た瞬間みんなに大笑いされてしまうような人ってなかなかいないと思う。

 

あまりにも面白すぎたから知人に彼がまた来たら自分に連絡して欲しい旨伝えて帰った笑。

 

2人目の人は車椅子に乗ってる人だった。

 

付き添いの人と2人で待ってた。

 

知人と付き添いの人は昔からの知り合いで車椅子の人は刑務所で一緒だったらしい。

 

 食事をする店がエレベーターが無かったので3人がかりでその車椅子の人を運んでいった。

 

付き添いの人がシャブ中だと言うのは知人から聞いている。

 

この車椅子の人がやってるのかはこの時点では分からなかった。

 

飯を食ってる時に気付いたんだけど車椅子の人から小便の匂いがぷ~んって感じで匂ってきたのでオムツなんだろうと思った。

 

その後知人と用事を済ませてこの人達の家に行くと玄関に入った途端とんでもない異臭に見舞われた。

 

車椅子の人は柱に手をかけて立ち上がって知人を迎え入れてくれた。

 

部屋に入るとメチャクチャ汚かった。

 

足場の踏み場もなくて砂利とかがいっぱい転がってる。

 

こりゃ酷いなと思ってたらいきなりビチャビチャと音がしたからえ?って思って音がする方を見てみると、車椅子の人が立ったまま失禁してた。

 

それ見てオムツ吐かせてないのかと思ってたら付き添いの人がすみませんと言ってタオルで床を拭いた。

 

その小便が付いてるタオルをその辺に無造作に置いてたから、たしかにこれではこれだけ部屋が汚くなるのは当たり前だなと思った。

 

付き添いの人が車椅子の人の腕を両手で握ったり緩めたりしてる。

 

まさかと思ってたら知人に「血管が細すぎて入らないんですよ。入れてあげてもらえませんか?」って言ってきた。

 

知人も少し困った顔をして「そんな身体で大丈夫なのか?」と。

 

車椅子の人が懇願するような目で知人を見てる。

 

たしかに知人は注射を打つのがうまい。

 

それでも中々入らない。

 

車椅子の人は何とか覚醒剤を入れて欲しいと必死の顔のように見えた。

 

その時ふと思ったんだけど、この車椅子の人そこまで年ではないのにガンになって脳梗塞になって余命がどのくらいあるのか分からなけど、唯一の楽しみが覚醒剤なのに、その覚醒剤も血管が細くて入らないって何か複雑な思いになった。

 

結局5分くらいかけてやっと入った。

 

知人が「どうや?」って聞くと、

 

「瞳孔が開いて来ましたよ。ありがとうございます」って言った車椅子の人の顔は何とも言えない表情だった。

 

 

 やはりこうゆう夜に浮かぶマンションはムシがわく。