最近はやりの新築の家
今日は秋空が広がっている。柿の木には実が枝もたわわに実っている。穏やかな一日である。
さて、最近いいなと思った出来事を久しぶりに紹介する。
先ず、タレント勝俣邦和(かわまたくにかず)の話から。中国の皆さんも『窓際のトットちゃん』という作品は読んだことがあると思う。その作者黒柳徹子が司会をする『徹子の部屋』という番組がある。この番組に勝俣氏がゲスト出演したことがある。その中で家族のことを語ることがあった。彼の母君はカレーライスが得意。他の追随を許さないほどおいしいと絶賛した。また奥様もカレーライスが得意とも。あれこれ料理の話を進めて行くうちに彼は語った。「夕飯時に料理の香りがしてくる。この瞬間にああ俺って幸せだなって感じる」と。競争の激しい芸能界にあって、彼には幸せが多分こんな日常の些細なところにあるんだなあと推察した。
二つ目。日本のプロ野球球団に日本ハムファイターズというチームがある。各球団にはチアガールがいる。当然日本ハムファイターズにもいる。地元北海道札幌市を中心にその地域の若い女性を採用し、ダンスチームを作っている。これまでも存在していたのだが、今年は大ブレークした。それは試合の合間に彼女たちが踊る『キツネダンス』(注)が人気を博したからである。歌詞も振り付けも馴染みやすく観客に受け入れ易かった。もちろんここに至るまでのスタッフの準備や工夫は半端なものではなかったということは想像に難くない。
シーズン開始当初はそれほどではなかったのだが、日を追うごとに人気に拍車がかかった。こういう状況は『キツネダンス』が親しみ易かったからだけではなかった。若い彼女たちの踊る時の笑顔が素晴らしいのだ。笑顔に引き込まれそうになるのだろう。また、それが球場内の観客、テレビの前で応援するファンの心をしっかり掴んだのだ。若さだけでなくこの笑顔が人々をいい気分にさせる、幸せにさせるのだと、この半年間彼女らを追い続けた。
三つ目。日本のプロ野球からアメリカのメジャーリーグへ行った人で鈴木一朗(通称イチロー)がいる。マリナーズに入団後数々の記録を打ち立てた。攻守に秀でた選手としても人気を博した。今年彼はマリナーズ球団の野球殿堂(長年野球界の発展に貢献した元選手たちにその功績を称え、顕彰される)入りした。
そのセレモニーが実施された日(8月28日)のことである。試合前に始球式が行われた。その日投手役を務めたのはアリス・スキナーさん(注2)。当然アメリカの若い女性。彼女はイチローといかなる関係があるかというと、12年前、イチローがまだ現役の選手であったころの話である。ある日の試合でイチローはライトを守っていた。ライトに上がったフライボールをスタンド側に追った。ボールはスタンドに入り、彼は手を伸ばしたが取れなかった。そこに座っていたまだ少女だったアリスさんの体に触れたか何かで、声をかけた。イチローのファンだったのだろう。その瞬間、アリスさんは飛び上がって喜び、周囲の観客にも何かを語り掛け、その興奮ぶりはテレビの前の私達の心にも深く印象付けられた。
そして、2022年8月28日。始球式の投手に指名されたアリスさんはマウンドに上がった。ボールを受け止める捕手はまだバッターボックスの定位置には来ていなかった。球場アナウンスで捕手イチローがコールされると、アリスさんは12年前と同様マウンド上で飛び跳ねて喜び、嬉しさを体全体で表していた。彼女はイチローが捕手を務めるとは聞いていなかった。サプライズの演出だったのだ。それ故の喜び爆発だった。始球式が終わり、イチローと記念写真を撮り、グラウンドに来ていた家族のところへ帰っても興奮は治まっていないようだった。アリスさんは良家のお嬢さんなのかその喜びようは純粋なものに見えた。人間性が見えるようだった。アリスさんは女性としての美しい変化はあったが、イチローは引退した後も現役の頃と変わらぬ鍛錬を続け、体型は今も変わらない。ずっと努力の人である。
人にはそれぞれ役割がある。前にも書いたと思うが、周囲の人を喜ばせたり、幸せを感じさせてくれたりする人はいつの時代にも必ずいる。そういう人を身近に持つ人は幸せである。しかしながら、そういう人のそこまでに至る並みなみならぬ努力精進、艱難辛苦を忘れてはならないとも思うのである。
【注1】『キツネダンス』……ノルウェーのタレントYlvis『TheFox』が 原曲。
【注2】アリスさんのことはYou Tubeにアップされている。
〈中級者向け言葉のクイズ〉
【問】「節句ばたらき」の意味として適当なものを次の中から選びなさ い。
ア 熱心に節句の準備をすること
イ 休みなのにせっせと働くこと
ウ 人の休む時に忙しそうに働くこと
エ のんびりとひとりではたらくこと
最近はやりの新築の家
【答】 ウ
くわしくは「怠け者の節句働き」と言う。平素怠けている者は、みんな休む節句に働かなければならなくなる羽目になるからである。
「節句」は「節供」とも書く。一年に人日=一月七日、上巳=三月三日、端午=五月五日、七夕=七月七日、重陽=九月九日、の5回ある。この日には、仕事を休み、それぞれの行事をし、特別の食物を食べる風習がある。
なお、「怠け者の節季ばたらき」が正しいと言う説もある。「節季」は、盆や暮の、清算する時である。怠け者が、この押しつまった時期に懸命に立ち働くという意味だと言う。
〔参考資料〕
『語源のたのしみ三』(岩淵悦太郎・毎日新聞社)

