22年に出版されたエッセイ

『じゃむパンの日』の著者である

赤染晶子さん。

『じゃむパンの日』は読んでみたいと

思いつつ、まだ未読なのですが、

(本屋で少し立ち読みはしました…)

先にこちらを読んでみることに。


『乙女の密告』

赤染晶子

新潮文庫


みか子は京都の外国語大学の女子大生。


日本人の教授の授業中、ドイツ語の

スピーチのゼミを担当している

バッハマン教授が乱入してくる。

そこで発表されたのは、

スピーチコンテストの暗唱の部の課題。

「1994年4月9日 日曜日の夜」

アンネの日記の一部だ。


ちなみにバッハマン教授は

女子学生を乙女と呼ぶ。


この本の中でみか子の生活や思いが

アンネの日記と二重三重に重なっていく。

単純に重なるのではない。

あらゆる場面でいろいろな形で

重なっていく。


日本人の多くは『アンネの日記』と

聞いて、生き延びることのできなかった

悲劇の少女を思い浮かべるのでは

ないだろうか。


でもバッハマン教授はそんな安易な解釈を

認めない。

アンネは日記の中で、ユダヤ人として生きて

いくことのできない不条理

求めてやまない祖国について

書いているのだ。

たった15歳の少女が。

アンネの強い思いが、深く胸に突き刺さる。


どうしても覚えられない一文が

あったみか子。

その一文をやっと口にしたとき

みか子は本当の「アンネの日記」を知る。



「何世代も何世代もユダヤ人は祖国を

異郷の地から偲びました。ユダヤ人の

祖国とは世代を超えた記憶の彼方に

あるのです。この受けつがれた記憶が

ユダヤ人をユダヤ人たらしめました。

アンネは自らを『祖国を失った者』と

語ります。それこそがアンネなのです。

ユダヤ人なのです」


これだけの内容で複雑な構成で

ありながら、とても軽妙なタッチで

書かれていて読みやすい。


これはおすすめの一冊です📚