先日、旅行に行くからと子どもが飼っている

猫を預かりました。

いいよ〜と安請け合いをしたものの心配も。

私が猫を飼っていたのは子どもの頃です。

飼っていたとはいえ、餌をあげるだけで

猫は自由に外へ出掛けていました。

しかも家族は猫嫌い。それでも猫の可愛さに

負けたのか、「あとをついて来て可愛いな」

なんて言っていました。

猫もいたずらをすることなく、良い子で

無事任務終了。

少しの間でしたが、いなくなると

何だか寂しい。


窓の外を眺める後ろ姿

座布団の上でくつろぐ様子

そんな猫を見ながら思ったのは

猫って本当にしっぽでしゃべるんだなと。





『猫はしっぽでしゃべる』

田尻久子

ナナロク社


「大切に売りたいので、たくさんは

置いてありません。

不便な本屋かもしれません。

探している本は見つからないかも

しれません。

でも、旅先でふと出会う人や風景のように

本と出会える本屋でありたいと思います」


熊本にある本屋『橙書店』

その店主が田尻久子さんだ。

小さい本屋ながら、谷川俊太郎さん、

村上春樹さん、池澤夏樹さんなどが

訪れる。

詩人伊藤比呂美さんが主宰する

『熊本文学隊』の本拠地であり

思想家渡辺京二さんが発起人となった

文芸雑誌『アルテリ』の編集部。

作家坂口恭平さんの仕事部屋でもある。


田尻さんは読むのは大好きだが

書くことはしなかった。

嫌がる田尻さんに何度も文章を書くように

言い続けたのは渡辺京二さんだった。

そんな田尻さんの文章が人を

惹きつけないわけがない。


無駄のない、凛とした文章

それでいてまなざしは温かい


熊本地震で移転を余儀なくされた

エピソードでは、いかに橙書店が

人々に慕われているかがわかる。


本の中で紹介される本は弱者に寄り添う

骨太な本ばかりだ。


橙書店の本棚にも、このような本が

並んでいるのだろう。


「ふりかえる」では

活字中毒あるあるや、本好きのお客さん

との日々が書かれている。

私にも思い当たる節があり、面白かった。

歯を磨きながら読んでいたら

いつの間にか歯ブラシをくわえて

本を読んでいるだけだったとか…


その章の中で田尻さんが大切に

読んでいたのは

『すべての見えない光』

アンソニー・ドーア


「たわいのないことでも、その経験は

血となり肉となる。

そしてその色、音、触感、

すべてが想像力を培う。

培われた想像力が、本を読む楽しみを

さらにまた増やしていく」


「小説はつくりごとだと言う人がいる。

でも、そこには語られるべき真実が

ひそんでいる」


いつか訪ねてみたい本屋さんです。