『文にあたる』

牟田都子

亜紀書房



『へろへろ』鹿子裕文/ちくま文庫、

『本を読めなくなった人のための

読書論』若松英輔/亜紀書房など

多くの本の校正をされている

牟田都子さんが書かれた本です。


2018年に放送されたテレビ番組で

牟田都子さんを知って以来

大のファン。

いつかお会いできたらと思っていましたら

なんと願いが叶いました。


テレビや文章から受けた印象通り

相手の顔を真っ直ぐに見て

言葉を選びながらお話をされる

とても誠実で清楚な雰囲気の方でした。


校正というのは、単純に文字や言葉の

誤りを訂正したり、事実確認をすれば

いいというものではありません。


10人いれは10通りの校正がある。

出版社によってもやり方が違い

著者の文章を尊重するところもあれぱ

ガシガシ訂正を入れるところも。


校正をされないまま

本が出版されることもある中で

校正の意味とは?

牟田都子さんは問い続けます。


「多くの読者にとって、本とは安心して

読めるものなのです。その信頼を

失わないために、損なわないために

やはり校正はあってほしい」


「本を作るということのゴールは

読者の手に渡ること、読まれること。

読まれることで初めて本として

完成するとさえいえるのではないか」



「後世に残すべき本かどうかは私の

決めることではない。「残す」のでは

なく「残る」

内容の如何にかかわらず、いま

私たちのつくっている本が、百年後にも

形を失わないことを考えたい」

(栃折久美子『装丁ノート 製本工房

から』集英社文庫



この本には牟田都子さんの

本や言葉への真摯で熱い想い

校正という仕事への向き合い方が

書かれています。

そして数々の面白いエピソードも。


例えば片岡義男さんの誕生日の情報が

2つあるとか

有名な滝平二郎さんの切り絵による

表紙の絵本『モチモチの木』の

本文と絵が77年の重版分から

変わっていること。

村上春樹さんの『海辺のカフカ』の

2刷目からの訂正など。



本を手にしたときの重さが

作り手たちの想いに変わる

そんな一冊でした。


そうそう、パンダの尻尾は白いって

知ってました?