おしゃれなタイトルとレモン色の帯に

惹かれて取った一冊。





タイトルは


永遠に忘れてしまう一日に

レモン石鹼泡立てている


という東直子さんが以前詠んだ短歌より

とられています。


歌人、作家である東直子さんが書かれた

書評、エッセイ集なのですが、

東さんの言葉が柔らかく、心地いい。

まるで幼い子の肌に触れているかのよう。


書評を読んで読みたくなる本が

増えるのはいつものこと。

今回はもっと知りたいと思う歌人たちと

出会いました。


あおあおと躯を分解する風の

千年前わたしはライ麦だった

   大滝和子『銀河を産んだように』


サンダルの青踏みしめて立つ

わたし銀河を産んだように涼しい

   同 『人類のヴァイオリン』


東さんによれば

これらの歌にあるのは

「たった一人で世界に立ち、

充足している感覚」


たしかに、この歌を目にしたとき

私の足裏はぐっと大地を踏みしめた

感じがしたし、清々しい風を受けながら

深呼吸をしたかのような気持ち良さが

ありました。


電車の中でしたけど…


桜ばないのち一ぱいに咲くからに

生命(いのち)をかけてわが眺めたり

      岡本かの子『浴身』


てのひらをくぼめて待てば青空の

見えぬ傷より花こぼれ来る

      大西民子『無数の耳』


読んだ瞬間、涙が出そうになります。

悲しいのではなく、表現の美しさに。


少ない文字数で、どこまでも広がる

豊かな世界がある。時も超えて。


実は以前のブログで立ち読みしていたら

『チボー家の人々』や『黄色い本』が

出てきたというのは、この本です。



作家、堀江敏幸さんについて書かれていた

ページにほんの数行だけ。

時々、こんな偶然に出会うと

嬉しくなりますニコニコ


少しずつ読み進めている

『チボー家の人々』


登場する人物の気持ちが

とても細やかに描写されていて

これからのストーリーも気になりますが

じっくり読んでいます。



「書いた人が、読んだ人が、どんなに

変わっても、たとえこの世にいなくなった

としても、どんなに時代が移り変わっても、

本の中の世界は、永遠だ」


「自分の気に入った詩の言葉を心の中で

つぶやく行為は、願いをかなえるために

呪文を唱えることにとても似ている。

短歌を知る、覚えていくということは、

自分の気持ちを保つための言葉を確保

していくことでもあるのだと思う」


与謝野晶子や岡本かの子、田辺聖子さん

についてのエッセイも興味深かったです。


短歌に興味がなくても

本が好きな方におすすめしたい一冊です。