以前観た映画『パブリック』


ホームレスの人々が雪の夜の居場所を

求めて図書館に立て籠る。

「民主主義の最後の砦」として

図書館の職員たちがホームレスの人々を

守ろうとするストーリーでした。

その中で主人公が読んだ本のフレーズ。


『腐敗のにおいが、この土地に満ちわたる。」

「告発してなお足りない犯罪が、ここでは

おこなわれている。泣くことでは

表現できぬ悲しみが、ここにはある。

われわれのすべての成功をふいにする

失敗がある。」

「人々の目には失望の色があり、

腹を減らした人たちの目には湧きあがる

怒りがある。人々の魂の中に

怒りの葡萄が実りはじめ、それがしだいに

大きくなってゆくー収穫のときを待ちつつ、

それがしだいに大きくなって行く。」


これが『怒りの葡萄』の一節だと

知り、読みたいと思っていました。

アメリカでは10代の必読書だとか。


銀行に土地を奪われた農民たちは

ボロボロのトラックに僅かな家財を積み

仕事を求めてカリフォルニアへと向かう。

しかしそこには人々が思い描いていた

生活とは違う厳しい現実がありました。


何度も出てくる“渡りびと”という言葉。

野営をしながら仕事を探す人々のこと。


でもその生活から抜け出す手段なんてない。


土地や家ばかりか、家族も自尊心も

失っていく。


そんな生活の中で、主人公トムとお母は

気丈に家族を支えようとする。


飢えた人々の前でオイルをかけて焼かれる

オレンジの山。

川に流されるたくさんのじゃがいも。

人々がじゃがいもを取らないように

見張りがいる。


すべては大農園と銀行の利益のため。


思い出されるのは、昨年観た映画

『ノマドランド』


リーマンショックで家を失った女性が

Amazonやキャンプ場などの仕事を

探しながらキャンピングカーで

国内を移動していました。


夕暮れと夜の間の薄い色をした空を背景に

浮かび上がる美しい山並み。

それを見つめる主人公の横顔。

とても印象的な場面でした。


『怒りの葡萄』は1930年代を舞台にした

小説ですが、今も同じ境遇の人たちがいる。


今年読んだ小説の中で

一番心に響いた作品です。


スタインベックの力強い文章と

細やかな自然の描写。

他の作品も読んでみたいですおねがい