東京、荻窪駅からだいぶ(笑)歩いた

 ところにある本屋『Title』


 そこは店主辻山良雄さんが『旗』を

 立てた場所。


 これは辻山良雄さんが店に立つ

 日々のなかで感じたこと、考えたことを

 書いた本です。


 



 大学を卒業して入社した書店での話

 家族の話

 そしてコロナ禍での話

 

「本棚を眺めているだけで、なんだか

落ち着いた気持ちになってきますね。 

そうだね。わたしはずっとそこに

いるからそれがあたりまえのように

思っていたけど、そもそも本が

静かに並んでいる光景自体に人を

鎮める力がある」


 買い占められて空になった

 トイレットペーパーの棚を前に

 

「自分はこうした行為に抗うため、本を

売っているのではなかったか」


 自分の無力さにことばを失うときも。


「雨が降る日、風が吹く日、店は

そこに立っている。ぽつぽつと天井を

激しく叩く雨音を聴いていると、この

古い建物自体が荒波を進む船のようにも

思えてくる」

 

 そして同時に思う。

 

「古くて沈みそうに見えるけど、

そう簡単には沈みませんから」






「一冊ずつ手がかけられた書棚には

光が宿る。それは本に託した、

われわれ自身の小さなこえだ」


 『Title』に並べられた本は辻山さんが

 こだわって選んだもの。

 店主に似るのか(笑) 一冊一冊の本の声は

 小さく、自己主張の強い本はありませんが

 ささやきかけてくる本ばかりです。


 そして店の雰囲気と相まって

 本たちも居心地が良さそうニコニコ





「たとえ知らなくても少しでも興味を

惹かれた本があれば、まずは

その本に触ってみることだ。

触っているうちに、ただ紙の束にしか

見えなかった物体は、〈本〉として

認知されるようになる。そうした

未知の本こそが、その人自身、延いては

世界を豊かにする。

本屋の本棚に知らない本が並んでいる

ことは壁を意味するものではない。

それは尽きることのない、世界の

豊かさを示しているのである」

  


 今、本を取り巻く状況は厳しい。

 それでも辻山さんのような方がいる。

 そしてそれに続く人がいる。

 このような方たちの存在を

 心強く、頼もしいと思います。